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光に満ち溢れ、闇や影の欠片さえ見当たらない神聖な場所、それが“天界”。
地面全てが、ふかふかの雲で出来ており、歩く度に足が沈む為、その世界で住む者達は“浮遊”して移動する。
そんな中、大きな光背を後ろに掲げる女神と、その遣いである天使……の“見習い”が何やら重要な話をしていた。
「世の中には自ら大切な命を絶とうとする人間もいます。
今から天使見習いの貴方に課す試練は、そういった“人間”を救う事。
性別や年齢、方法等は問いません。
猶予は下界に降りてから二十四時間、つまり“一日”です」
「ッ!」
怯えた見習いは恐る恐る訊く。
「も、もし達成出来なければ?」
「天界に住む我々が最も畏怖することを貴方に天罰として与えます」
女神様から課せられる試練をクリアして初めて見習い天使は一人前の“天使”と成れる。
同期が次々と、その試練にクリアしていく中、最後まで残ったのは普段から“出来損ない”と馬鹿にされている彼だけだった。
「ひぇ~!」
叫び声を上げる見習い。
“試練”自体にもそうだが、何より痺れを切らした女神様にペナルティを与えられる事が嫌だったから。
その内容は──
「下界に堕ちて“人間”に成り下がりたくなければ、精々頑張りなさい。
貴方だけなのですよ、未だに“見習い”なのは」
呆れたように溜め息を吐く女神。
「はい……」
既に意気消沈した見習いは覇気の無い返事をしながら下界へと降りていくのだった。
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