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そうして下界に降りる見習いであったが、何処を探しても命を絶とうとしている人間などおらず、街は平和そのもの。
数時間後──
「ぐわぁ~!!何なんだよぉ~もおぉぉぉ!!!」
焦燥から頭を掻きむしる見習い。
何の成果も出せず、とうとう日が暮れてしまい、空は茜色に染まっていた。
飛んでいく鴉達の鳴き声すら自分を馬鹿にしているような気がして。
「こうなったら無理矢理にでも死にたい奴を作り出して──」
見習いといえど、天使らしからぬ不謹慎な発言で、何処から取り出したのか、死神のような大鎌を振り回す。
そんな物騒な事を考えている時だった。
「あ!」
見習いが目にしたのは、歩道橋の欄干にもたれ掛かり、虚ろな視線を下に向ける男の姿。
ようやく兆しが見えた見習いは最低な事に凄く喜んでいた。
「(っしゃー!死にたそうな奴見っけた!!!)」
心の中でガッツポーズをしながら。
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