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数秒後、男は気まずそうに訂正する。
「ごめん。アンタの言葉は凄い響いたんだけどさ、別に死にたくて、ここにいる訳じゃないんだよ」
「え、そうなん?」
「いや、さっき言っただろ。“何も考えたくない”って。
確かに悩んではいるけど、死にたいって程じゃ」
「じゃあ結局死のうとしてた訳じゃねぇのかよっっ!?」
「まぁ……」
「くっそう!時間無駄にしちまった。
まだやることあっから、悪ぃけど、ここまでだわ。
このままだと俺の方が死にたくなっちまう」
「アハハ!天使でも“生死”の概念ってあんのかよ。
まぁでも助かったよ。
奇妙な体験だったけど、少し心が軽くなった。有り難うな」
「なら良かった!じゃあな、フリーター!!
人生、上手くいくといいなぁ~!」
見習いはそう言って手を振りながら、その場を後にした。
「お前も立派な天使に成れよ」
残された男はボソッと呟く。
そして迷いの靄が晴れたのか、深呼吸をした。
「……もうちょっと頑張ってみますかね」
そう言って歩き出した男の足取りは、とても軽いものだった。
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