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「どうしても君に言いたいことがあって」
真剣な面持ちの斗真に、紫緒の胸がいやがおうにも心拍を早くする。
まさか、告白? 仕事の昼休みに?
疑うものの、わざわざ二人きりで言うことなんてほかに思いつかない。
「君が好きになりました。つきあってください!」
斗真が頭を下げる。
紫緒は驚いて立ちすくんだ。
彼を異性として意識してはいたものの、急な告白にどうしたらいいのかわからない。
「ごめんなさい、あの」
紫緒は言い淀む。どう答えたらいいだろう。お友達から、でもいいんだろうか。
そう思う紫緒の耳に、斗真のため息が聞こえた。
「なんだよ、ごめんって」
普段と違う口調に、紫緒は驚いた。
「断られたよ、詠羅!」
斗真の声で、屋上の扉がぎいっと開いて詠羅が現れた。
スマホのカメラを紫緒たちに向けている。
「あんたのくせに生意気ね!」
詠羅に続いて、詠羅のとりまきの女性が二人、がくすくす笑って現れた。
「見た? 告白されたときの顔」
「嘘とも知らずに、ときめいてたわよね」
「昨日、食事に行ったときの写真も面白かった!」
「その前も! 詠羅が意地悪を言ったあと鯖田さんが割って入るとあからさまにうれしそうでさあ」
「遊ばれてるとも知らずに」
口々に言われて、紫緒は唖然と斗真を見る。
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