第一章 神頼み

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「俺がお前なんかに本当に気があると思ったのか?」 「その子は図々しいから。いっつも物欲しそうに斗真を見てたの、知ってるんだから」  嘲笑いながら詠羅は斗真にしなだれかかる。  そんなつもりはなかったが、斗真を目で追ってしまうことがあるのは自覚していた。 「なんで嘘の告白なんて」  紫緒は憤りを隠せなかった。 「どっきりよ、どっきり! これくらい笑って流せないでどうするのよ、大人なんだから!」 「大人はこんなことしません」  言い返すと、詠羅はむっとした。 「あんたを楽しい気持ちにさせてやったのに。感謝しなさいよ!」 「余計なお世話です」 「恋人いないからって、ひがんじゃって」 「いないわけじゃないです」  とっさにそう言ってしまった。 「へえ」  面白そうに詠羅が口角を歪める。  しまった、と思ったときには遅かった。 「じゃあ連れて来てよ。今週末、会社のレセプションに特別招待してあげるわ」 「いいえ、結構です」  紫緒はすぐに断る。  が、詠羅はそれを許さない。 「私の婚約発表もするの。恋人を連れてきなさい。命令よ」  詠羅はにたりと笑い、斗真と腕を組んでとりまきとともに屋上から出て行く。  ぱたん、とドアが閉まり、紫緒はその場に座り込んだ。
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