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振り払おうともがいていると、砂利の中を走る足音が聞こえた。
振り向き、驚く。千暁が走って来るなんて。
「ちょうどいいところに来た」
斗真は紫緒から手を離し、にやにやと千暁に向き合う。
「会社のご令嬢があんたに会いたいっていうんだ」
「お断りします。私は彼女と結婚する予定です」
千暁はきっぱり言い、斗真を見据える。その目は氷のように冷たい。
紫緒はただ動揺した。
「そいつは俺が好きなんだよ」
「嫌いです」
とっさに紫緒は言った。
「あんなことされて好きになる人なんていません」
「なっ……」
絶句した斗真に、紫緒はさらに言う。
「彼は優しくて素敵です。あなたみたいに穢れてませんし、なにもかも比べ物になりません!」
「そこまで言われると照れますよ」
千暁は嬉しそうに微笑し、それからまた斗真を見た。
「神がご照覧遊ばしています。道にもとることのないよう、正しくおありください」
千暁の声音は迷いなく厳しく、それだけに迫力があった。
斗真はがくりとうなだれた。
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