第三章 転機

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 振り払おうともがいていると、砂利の中を走る足音が聞こえた。  振り向き、驚く。千暁が走って来るなんて。 「ちょうどいいところに来た」  斗真は紫緒から手を離し、にやにやと千暁に向き合う。 「会社のご令嬢があんたに会いたいっていうんだ」 「お断りします。私は彼女と結婚する予定です」  千暁はきっぱり言い、斗真を見据える。その目は氷のように冷たい。  紫緒はただ動揺した。 「そいつは俺が好きなんだよ」 「嫌いです」  とっさに紫緒は言った。 「あんなことされて好きになる人なんていません」 「なっ……」  絶句した斗真に、紫緒はさらに言う。 「彼は優しくて素敵です。あなたみたいに穢れてませんし、なにもかも比べ物になりません!」 「そこまで言われると照れますよ」  千暁は嬉しそうに微笑し、それからまた斗真を見た。 「神がご照覧遊ばしています。道にもとることのないよう、正しくおありください」  千暁の声音は迷いなく厳しく、それだけに迫力があった。  斗真はがくりとうなだれた。
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