第四章 求婚

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「巫女にも変な人がからむことあるから気を付けてね。ただのコスプレみたいに思ってる人もいるし」  いろいろと考えが甘かった、と紫緒は改めて反省した。  朝の日供祭の間も朝礼の間も、数年で定年ということが頭に残った。  どれだけ頑張っても結末が決まっている。そんなこと、千暁は言ってくれなかった。  その後の再就職はどうしたらいいのだろう。  そのころには結婚も今より真剣に考えなくてはいけないだろう。だが、そんな相手が見つかるのだろうか。  いや、今まで縁がなかったのに見つかるとは思えない。斗真に憧れたりするあたり自分は男を見る目がない。しっかり働く道を選んだ方がいいだろう。  転職活動はいつからしたらいいんだろう。  まずはここで定年まで働いた方がいいだろうか。そのほうが勤め上げた実績として見てもらえるかもしれない。  悩みは尽きない。  朝礼を終えると、宮司からの研修を受けた。  千暁は地鎮祭で外へ出るということだった。  午前中でもすでに三十度を超える中、あの装束で祭儀を執り行うなんて、どんなに大変だろう。  巫女装束の自分もすぐに汗だくになってしまう。  午後はまた彩陽の研修を受ける。  授与所は窓を閉め切ってクーラーを入れていた。それでも充分に暑かった。  窓をこんこんと叩かれ、紫緒は顔を上げる。
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