第四章 求婚

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「NFTがあって良かったですよ。あれのおかげでデジタルアートの波が来ましたから」  なじみのない言葉で、紫緒は首をかしげた。 「非代替性トークンと訳されています。所有の証明書というか、鑑定書というか、そんな感じですよ」  弘文は饒舌に説明した。 「なんにも知らないんだな」  ボソッとつぶやく大晴に、だんだん腹が立ってきた。なんでそこまでバカにされなくてはならないのだろうか。  だが、自分はお茶出しに来ただけだ。充分に長居をしてしまった。 「お邪魔いたしました」  紫緒は頭を下げて退室した。  あんな人のマネージャーでは大変だな、と弘文に同情した。  仕事を終えて帰ると、美津子に出くわした。  紫緒は美津子が押しているものを見て驚愕した。ハンドルが特徴的な大きなバイクだった。 「お疲れ様、今帰りなの?」 「はい」  驚いて、ついじろじろ見てしまう。視線に気づいた美津子は笑顔になった。 「愛車のハーレーよ」 「すごいですね」  彼女がバイクに、しかも大型車に乗るなんて、想像もしていなかった。 「昔からの憧れだったの。免許をとりにいったのは息子が高校生のときでね、周りにはびっくりされたわ」  美津子はほがらかに笑う。
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