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「NFTがあって良かったですよ。あれのおかげでデジタルアートの波が来ましたから」
なじみのない言葉で、紫緒は首をかしげた。
「非代替性トークンと訳されています。所有の証明書というか、鑑定書というか、そんな感じですよ」
弘文は饒舌に説明した。
「なんにも知らないんだな」
ボソッとつぶやく大晴に、だんだん腹が立ってきた。なんでそこまでバカにされなくてはならないのだろうか。
だが、自分はお茶出しに来ただけだ。充分に長居をしてしまった。
「お邪魔いたしました」
紫緒は頭を下げて退室した。
あんな人のマネージャーでは大変だな、と弘文に同情した。
仕事を終えて帰ると、美津子に出くわした。
紫緒は美津子が押しているものを見て驚愕した。ハンドルが特徴的な大きなバイクだった。
「お疲れ様、今帰りなの?」
「はい」
驚いて、ついじろじろ見てしまう。視線に気づいた美津子は笑顔になった。
「愛車のハーレーよ」
「すごいですね」
彼女がバイクに、しかも大型車に乗るなんて、想像もしていなかった。
「昔からの憧れだったの。免許をとりにいったのは息子が高校生のときでね、周りにはびっくりされたわ」
美津子はほがらかに笑う。
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