第四章 求婚

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「お風呂上りでしたか?」 「はい」 「どおりで、なんだか色っぽいと思いました」  見つめられ、紫緒の顔がカーっと熱くなる。 「お邪魔してすみません、私は部屋に帰りますので」  歩き出そうとしたとき、タオルがはらりと落ちた。慌ててつかもうとした紫緒はバランスを崩してしまい、窓の外に倒れそうになる。 「危ない!」  千暁が素早く紫緒を支える。  抱きしめられる体勢になり、紫緒の顔はさらに熱くなった。  たくましい腕がしっかりと自分を支えてくれている。Tシャツ一枚だからダイレクトにその感触が伝わって来る。意外にがっちりした体格なのもわかって、さらに落ち着かなくなってしまう。  真っ赤になった顔を見られたくなくて、紫緒はうつむく。 「あなたは本当にかわいい方ですね」  千暁が耳元でささやき、吐息が耳にかかった。  なぜだか声が甘くなまめかしく聞こえた。初めてのことだった。男性の色気なんて今までさっぱり感じたことなどない。  穏やかで抑揚の少ない声なのに、自分にだけ向けられるとこんなにも胸を焦がすなんて。  体を離そうとすると、さらにぎゅっと力を込めて抱きしめられた。  紫緒は混乱した。  こんなふうに抱きしめられていては、勘違いしてしまいそうだ。
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