第四章 求婚

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「うなじが綺麗ですね」  うなじ!?  そんなところをほめられたのは初めてだ。  どうしてこんなに心を惑わすことを言うのだろう。 「これはセクハラになってしまうのでしょうか」 「いいえ……ほめてくださってますから」  答えながら、違うと気付いていた。きっと彼以外に言われたら不快でたまらない。 「では安心して言えますね。かわいい上に笑顔が素敵です。真面目に働く真剣な姿は美しいですし、巫女の装束が初々しい。今みたいに無防備な姿を見せられてしまうと、惚れない男はいないでしょう」  紫緒はうつむいた顔を上げられない。  鼓動がどんどん早くなっていく。 「夕方の話ですが」  千暁が言い、紫緒は黙って続きを待った。結婚したら住む家の話だろうか。 「紫緒さんが本当に結婚してくださったら良いのですが」  紫緒は思わず千暁を見あげた。  彼はいつものように穏やかな笑みを浮かべている。  冗談にしても、心臓に悪すぎる。  もしかして、誰でもいいから結婚して悪質なファンを撃退したい心境になっているのだろうか。  彼の穏やかな笑みを、月が静かに照らし出していた。
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