第一章 神頼み

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 紫緒はほっとした。  詠羅は営業のエースと言われている彼に甘い。 「だってえ」  甘えるように腰をくねらせ、詠羅は上目遣いで彼を見る。 「永高さんが頑張ってるのはみんな知ってるよ。なあ?」  近くにいた社員に話しかけると、社員は慌てて頷いた。 「陸里さんはルールに従ってるだけだから、悪いのはルールなんじゃないかな。永高さんが社長になったら、ぜひ社則を改善してもらいたいなあ」  斗真の発言に、詠羅は気を良くしたようだった。 「そうね、私が社長になったら大改革するわ」  さりげなく彼が誘導し、彼女を紫緒から引き離す。  紫緒が頭を下げると、斗真はにこっと笑って返してくれた。 「今日も雰囲気イケメンに助けてもらえたね」  美悠の言葉に、紫緒は苦笑する。 「言葉がきついよ」 「だってさ、いつもかばってくれる風味だけど、あの言い方だとご令嬢はなにが悪いのかわからないままじゃない。なんかおかしいのよね、あの人」  社員はみんな、裏では詠羅のことを皮肉を込めてご令嬢と呼んでいた。  紫緒は素直に感謝していた。  ほかに助けてくれる人なんていなかった。詠羅の気をそらしてくれるだけでもありがたい。  美悠が助けてくれようとするのはいつも紫緒が止めていた。巻き込みたくなかったし、彼女の言い方ではきっとケンカになる。 「いつまであの方法が続くのか不安しかないけどね。私は転職しようと思ってる」
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