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「昨日な、バイト先にめちゃくちゃかっこいい人が来てん」
「は、もっかい」
「いやだから、バイト先にかっこいい人が来てん、なんかその人が頭から離れやん」
補講終わりの教室に居残り、サッカー部の練習を眺めながら何気なく、昨日の出来事を口にした。
私の言葉によほど驚いたのか、校庭からこちらに視線を移した友人の冴英はしばらくフリーズした後、もともと大きな目をさらに大きく見開かせた。
「やーん!ふーみーーーー!あんたにも乙女な感情がちゃんとあったんか」
両肩をがっしりと掴まれ激しく前後に揺らされる。
「そっかそっか、高嶺の花子さんのあんたにも遂にアオハルが来たんやねえ」
「いや、ちょっと待って、」
「うわ~なんか自分のことのように嬉しいわあ」
「冴英、勝手に話進めんといて」
1人で勝手に盛り上がる冴英を鋭めに制したけれど、ポジティブ人間の彼女は全く気にしていない。むしろにんまりとした微笑みをお返ししてくる。
「だってさ、私ら生まれた時からずっと一緒におるけど、芙美からかっこいい人がいたなんて聞くの初めてやで?俳優とかアイドルにすら興味ないやん。基本何に対しても冷めてるあんたがそんなん言うなんて、もうそれは恋やろ」
「いや……恋とか、そういうんはちゃうよ」
「頭から離れんのやろ?もう恋やんか」
「……そんなんちゃう」
「で、どこのどいつなん?」
「多分やけど、この町の人ではない…というか、こっちの人やないと思う」
「ん?こっち?」
「綺麗な標準語を使ってたんよ。きっと東京の人やね」
「東京の人がなんでこんなど田舎に?出張か観光で来てるんかねえ」
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