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しばらく波をぼんやり眺めたあと、リュックを枕替わりに浜辺の上に大の字になって寝ころんだ。
心地のよい日差しにそっと目を閉じて波の音だけに集中していると、ふわふわと夢の世界に飛んでいきそうになる。
現実と夢の間を行き来していた時、潮の匂いをかき消すほどの煙草の匂いが鼻腔を刺激した。その匂いに一気に目は覚め、勢いよく起き上がって後ろを振り返った。
「……え、」
「見たことある顔だな」
「……」
「人違いか?いや、でも絶対見てるわ、この顔」
真顔でこちらを凝視しながら煙草を片手に近づいてくる男の人。
無地の白シャツに黒のパンツのシンプルな服装、アップバングの真っ黒な髪。優に180cmは超えていそうなスタイルの良さと切れ長二重のはっきりとした目鼻立ち。圧倒的な存在感を持つこの人は……
「あー思い出した。そこのコンビニの店員か」
――昨日のめちゃくちゃかっこいいお兄さんや。
「昨日はどうも。私のこと覚えててくれたんですね」
「俺のことも覚えてんの?」
「はい。14番の煙草、2箱買ってったお客さん」
「おー正解」
内心ドキドキしながらも、それが相手にバレないように至って平然を装う。
ザクザクと音を立てて砂浜を歩くお兄さんは迷うことなく私の真横に腰を下ろした。
「JKだったんだ」
「え?」
「大学生くらいだと思ってたわ。ちょっとびっくり」
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