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何を言っても言い負かされてしまいそうで、口をぎゅっと結んで鋭い視線だけをお兄さんに送った。
「なあJK、名前は?」
「有坂芙美」
「案外素直に名乗ってくれちゃうんだ」
「、は?」
「俺みたいな得体の知れない男に個人情報教えたらだめだろ」
さっきの意地悪な笑みとはまた種類の違う、口元を歪めてニヒルに笑う笑い方。それにもまんまとドキッとさせられてしまう。
「ぎ、偽名やし」
「へぇー」
「ほっんまむかつくな。おにーさんも名前教えてや」
「樋口由樹。特別に教えるから流出させんなよ」
綺麗な名前だと思った。
どちらかといえば、美人な女の人を連想させるその名前は、悔しくも綺麗な顔立ちのお兄さんにはぴったりだった。
「……流出させちゃる」
「……」
「いや、冗談やで」
「……」
それまで饒舌に喋っていたお兄さんが、煙草を口に咥えて黙り込み、じっとこちらを凝視してくる。
「なんかぐっときたわ」
「は?」
「最初からずっと思ってたけど方言ってぐっとくるよな」
意地悪な笑みは消え、至って真面目な顔でとんでもないことを言ってくる。
「……ぐっとくるって何、」
「可愛くてどきっとするってこと」
「……は、」
「お前みたいな大人びてる美少女ががっつり方言使ってるってところがポイント高い」
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