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あれから
もう3ヶ月が過ぎようとしてる
毎日のように
俺は大輝を見つめていた
そんな日常から
実は今
俺と大輝はそんな遠くには居ない
主要都市の北口と南口
駅を境に同じくらいの距離
互いにオフィスビルが立ち並ぶ街
その群衆に紛れながら
そこに大輝と俺は居る
徒歩にしてわずか10分
その僅かな距離が
2人にとっては
もう届かない
何億光年もの彼方に感じる
暑い夏の真っ盛り
俺は大輝の前から姿を消した
最後に伝えたい言葉を
とうとう言えないまま
何気ない一目惚れ
そんな重いものじゃないのに
俺をこんなにも狂わせてしまうなんて
自分でも気付かなかった
俺の住む街は桜も咲かない4月の事
俺はとあるオフィスビルの一室にいた
あの流行病が
俺から仕事を奪っていき
転職を余儀なくされたからだ
おかげさまで
次の職場からは
内定をもらっている
しかし勤務は社内情勢から3ヶ月先
喧騒を逃れ
好きな事をして
のんびり過ごすのも考えた
ただ俺の性に合わないのもわかっていた
3ヶ月って意外に長い
俺は短期の派遣社員として
淡々と次まで過ごす事に決めた
初めての派遣社員
年齢も性別も服装も
個性が溢れている
決まった時間に来て
決まった時間に帰る
そんな四角四面の
仕事はしたことがない
新鮮な一方で
つまらなく感じるのは俺だけじゃないだろう
同僚達の人の良さだけが救い
でも
楽しみはない
達成感も焦燥感もない
繋ぎだとわかっていても
退屈な日々だった
そのオフィスには
様々な企業がブースを構え
他業種が入り乱れている
大きなフロアの半分は
俺が所属する業務
他半分は3社が均等に分けて使っていた
その3社の中の1社で
リーダーとして働くのが大輝だった
年齢は20代後半(多分)
流行りの前髪系男子
黒縁メガネ
健康的な褐色の肌と
適度な肉付き
厚めの唇としっかりした下半身
大体オーバーサイズのファッション
アウトドア派なのかインドア派なのか
微妙な感じ
顔と体つきに俺は一目惚れした
性格とか生活とか
関係ない
肌感や肉感がとにかく俺の好みだった
大輝との距離はいつも30m前後
俺は毎日違う席に座り
大輝は持ち場をいつも歩き回って
時に真剣な眼差しでデスクに向かう
俺は大輝が出勤の時は
大輝が見える席を選ぶようにした
そして
大輝を目で追う
それで十分満たされていた
業務上関わりのない2人
話すタイミングなどあり得ない
挨拶すら
互いにというか
少なくとも大輝にとって
俺なんて
大勢の中の一部に過ぎず眼中にない
俺も他業務のリーダーに
話す機会など皆無
交わる事などない2人
俺はそれをわきまえて
眺めるだけの日々
時折休憩時間が重なると
共有の休憩場所で休む大輝は
飯を食いながらスマホを見つめ
後半30分くらいは
昼寝をしてる
帰りの時間が重なると
すぐに会社から出る
そして
線は違うが
俺と同じ方向の電車に乗る
若いのに
寄り道もほとんどしない
同僚との付き合いも無さそうだ
そんなルーティンのような
過ごし方をする大輝に
俺はどこか惹かれていった
明るくテキパキとしている一方
その裏側に
孤独を潜めて
人付き合いも乏しく
1人寂しく家に帰り
ゲームをしたり
酒を飲んで
紛らわす日々だろう
職場でもタバコを吸いながら
いつもゲームをするか
SNSを眺めるだけ
誰かとやり取りはしていない
俺はいつか
この子を抱きしめて
頭を撫でて
俺の胸で眠らせたいと思った
もちろん
あの体を隅々まで堪能して
俺を乞う言葉を言わせ
大輝の中に俺の欲望を注いで
紅潮した虚な表情を見たかった
事あるごとに視線を送る俺に
大輝もいい加減気付いていたはずだ
俺は敢えて
休憩やトイレの時に
遠回りをして
大輝の持ち場横の通路を使った
そんな俺を
大輝もまた横目で追ったり
わざと
俺とすれ違うようにタイミングを取る
トイレが一緒になる事もあった
タバコが一緒になる事あった
1日のうちに
そうそう重ならないだろう
そんなタイミング
俺はそこまで器用じゃない
計算高くもない
俺は大輝の事を何も知らない
大輝だって同じだ
勘違いにしても
大輝のタイミングは
明らかに
俺に合わせていた
オフィスの喫煙所は5人が入ると
いっぱいになるくらい狭い
始業前は特にそうだ
俺は早めに来て
一服していると
大輝も決まった時間に来る
スペースはまだあった
それなのに
俺のすぐ隣に来て背を向ける
視線はスマホに向けたまま
軽く柔軟剤の香りがする
そして
若者の一人暮らしの部屋の匂い
俺よりも少し背の高い
トレーナー越しの広い肩幅
後ろからそっと抱きしめて
振り向き様に
厚めの唇にキスをして
頭を撫でながら
「今日も可愛いな」って言うと
「恥ずかしいよ」と言って
真っ直ぐ目を見て
俺に覆い被さってくる
そんな想像が俺の楽しみだった
別の日の喫煙所
俺は1人右端の壁にもたれながら
リフレッシュしてると
大輝が入ってきて2人になる
こういう時
大抵の人は
逆サイドの端に行き
距離を取るのが定説
大輝は違った
俺に近い真ん中に来る
相変わらず
視線はスマホに向けられ
俺とは目を合わさない
フロアではお互いを目で追っているのに
何故か2人きりになると
互いに強がりの態度
俺はだんだん
大輝に不信感が湧いてくる
そして
トイレが一緒になったある日
3つ並んだ右端に大輝
左端に俺が用を足す
他に誰もいない
だからなのか
大輝は
便器から少し距離を取り
用を足している
いくら男同士とはいえ
あまり見えるように
堂々と用を足す人は居そうでいない
単純に大輝は
そういう少数派なのかもしれない
見たい気持ちを抑え
その場は終わった
しかし
また別の日
同じシチュエーションで
大輝はまた同じようにしている
わからないように視線をやる
明らかに距離を取り過ぎてる
でもこれだけでは何もわからない
俺が意識し過ぎてるだけだ
そう思ってまた別の日
その時はちょうど休憩時間終わりに近く
トイレも並ぶ状況
俺も並んでいると
先に用を足している大輝がいた
その時は
距離を近づけて
見えないようにしていた
それを見て
大輝は俺に
何かしらのサインをしてると
結論付けた
あとは
確信にするだけだと
それから数日後
トイレでまた2人きりになった
大輝は俺に見向きもせず
用を足す
また距離を取って
俺はわかるように
視線をそこに送った
すると
それに気付いたのか
大輝はつまんでいる竿を
細かく扱きだす
それはそういう事ではなく
出し切った後の作業
男だからわかる
でも
見られてるのは少なからず
わかっているはず
いくら男同士だとして
見える距離にいるのに
俺は複雑だった
それは全く意識をしていない証か
全く逆のアピールなのか
わずか1分足らずの出来事
俺は何も出来ずに立ち去った
大輝のその行為は何度か続いた
その度に
俺はジリジリとした思いだけが
積み重なり
決断出来ずにいる
今度は俺から何かしらのアピールを
しようと決心して
翌日
実行に移した
いつものように
お互いに視線を送り合う
いつものように
俺は大輝の側を通って休憩に向かう
俺が通り過ぎるタイミングで
大輝が俺の正面に来た時
俺は
大輝を見つめながら
自分の股間に手を伸ばした
周りは
自分の仕事に集中している
大勢の人がいる中
そこは俺と大輝だけの空間のように
俺は伸ばした手で
あからさまに弄ってみせた
大輝はびっくりしたように
一瞬目を見開き瞬きをした
どう考えても
普通じゃあり得ない動き
俺も初めてそんな事をした
これから大輝がどんな
リアクションをするのか
楽しみだ
それでも相変わらず
喫煙所やトイレや休憩室で
会話もなく目も合わせない
仕事中だけは
お互いに視線を送り合い
お互いに気づかぬふりをする
俺が3回目に弄りを見せながら
すれ違うために向き合ったある日
大輝も同じリアクションをした
パンツのズレを直すような
ポジションを直すような
そんな風に見える
どう考えても
仮にホントに直すだけだったとしても
すれ違い様にするのは
いくらなんでも
タイミングが良すぎる
俺は敢えてやって見せた
大輝も同じに違いない
俺は確信で思わずにやけた
そんな事があるにもかかわらず
俺は動けずにいた
大輝が相変わらずにフロア以外では
目を合わせようとしないからだ
あのリアクションは
たまにやり返してくる
わかっているはずなのに
それ以上には発展しない
やはり
大輝は普通の男なのか
俺にその魅力がないのか
どちらかしかない
それを確かめずに
俺は決まった時間の中を
終わらせられない
こうなったら
声をかけるしかない
ただ
10年前の俺なら
一切の躊躇はしなかった
今の俺には
躊躇しかない
相手にNOと言わせなかった
あの若さは
既に失われて
俺に足りないのは
取り戻せない若さだけ
それが一番の壁だった
何の進展もないまま
俺の期限はあと1か月
もう考えてる暇はない
俺は行動した
帰り際の喫煙所で声をかけた
俺「お疲れ様」
大輝「お疲れ様っす」
一瞬だけチラッと目を合わせただけで
大輝はそそくさと出て行った
これまで何度も挨拶くらいは
するタイミングがあったのに
お互い何も言わなかった
俺は少なからず
自分への自信の無さ
嫌がられてしまう怖さ
それに耐えられずにいた
大輝はどうなんだろう
俺と同じ思いなのか
ただ思わせぶりなだけなのか
全くの俺の思い過ごしなのか
結果はどうでもいい
確かめずにはいられない
それから俺は
タイミングを見て挨拶をした
大輝は自分から挨拶をしない
返す言葉はいつも同じ
態度も同じ
でもフロアにいる時は
何かにつけ
変わらずに視線を送ってくる
だんだん苛立ちにも似た感情が
俺に生まれていく
こうなったら
少なくとも俺の気持ちは伝えたい
最初から
負け戦だとわかっている
でも
戦う事に意味を見出したい
ただ
社内でそれは御法度だ
会社を出た後に
俺は大輝と対峙する事にした
さりげなく大輝と同じ電車に乗り
隣の車両から様子を伺う
俺が降りる駅には止まらない線の
二駅先で大輝は降りた
人混みの中で後を追って
偶然を装って声をかける
俺「お疲れ様!●●に住んでるんだ!」
大輝「あっ…はい」
俺「俺は××なんだ。近いな」
大輝「そうですね」
表情も変えずに
目もまともに合わせずに
歩きながら答える
明らかに興味を示さない
(何なんだよ…)
そう思っている間に
距離が出来る
嫌なら嫌で言えばいい
拒否もしない代わりに
愛想もない
一体どっちなんだろう
駅を出て周りの人もまばらになる
それをきっかけに再び話しかける
俺「あのさ…話しかけでも大丈夫?」
大輝「あっ…はい」
俺「よかった!仕事大変そうだね」
大輝「そんなんでもないです」
俺「そうか。実はずっと気になってる」
大輝「はぁ…」
俺「嫌じゃなかったら…話できる?」
大輝「別にいいですけど」
いざそう言われても
相変わらず無愛想で
興味がなさそうなのが目に見えてわかる
それから仕事の他愛無い話をするが
肝心な事が言えない
そうしてる間に
大輝「俺こっちなんで」
俺「わかった!また話せる?」
大輝「機会があれば」
横断歩道を急足で渡っていく
その後ろ姿が何だか虚しかった
フロアにいる時と
全然違う
やっぱり
喫煙所やトイレにいる時の
無関心な感じが大輝の素なのかも
そう考えると
ハッキリ否定されたかった
嫌なものは嫌って言えないのか
それとも緊張したか
どっちにしても
俺が求める答えはくれなかった
それから
俺は何回か挨拶をしてみた
でも態度はいつまでも変わらず
向こうから挨拶もしない
なのに
視線は送り合う
俺はイライラが募る
そしてある日を境に
全く見ることをやめた
通り過ぎるときも
一切目線を合わせず
まるで誰もいないかのように
喫煙所に大輝が入ってきたら
俺はすかさず出た
トイレもそう
確かめたかった
それだけだ
数週間そんな日々が続き
俺の期限はあと1か月になった
このまま意地を張って
終わるのか
毎日考えていた
俺は再び
大輝に視線を送り始める
アピールもした
話かけるのは出来なかったが
再び大輝も
俺にさりげないアピールをする
これ以上は
しちゃいけないんだろう
大輝には大輝なりの
何か思いがあるんだろう
俺があとわずかしかいないなんて
大輝はもちろん知る由もない
それでいいと
淡々と過ぎる日々を待った
最終出勤1週間前
俺は大輝に何かしらの
気持ちを伝えたいと思っていた
直接伝えることは
難しいのはわかっていた
だから
手紙を書いて忍ばせていた
とは言っても
簡単な走り書きみたいなもの
もう同じ空間には居れない
もしわずかな可能性があるなら
一度でいいから
ちゃんと話したい
この3か月の
2人の見つめ合い
互いのアピール
素気ない態度
この意味は
一体何だったのかを
知らずに俺は
ここを去れなかった
最後の日
俺は挨拶を済ませてブースを出る
そして
ロッカーで大輝を待った
大輝が来る
俺の傍のロッカーを使っている
横並びになった俺は
さりげなく
手紙を大輝の前に差し出した
俺「読んで」
大輝「なんですか?」
俺「いいから、読んでくれればわかる」
大輝「いや、いいです」
俺「とにかく読んで」
結局
今日が最後だとは言えずに終わった
大した会話もなく挨拶もそこそこ
そんな人から
いきなり手紙を渡されて
戸惑うのも無理はない
すぐに捨てられるかもしれない
それでもいい
俺は知りたかった
大輝との3か月
その真実は
何だったのかを
それから1週間後
俺は新しい職場に入った
大輝の事など
考える余裕などない
目まぐるしく過ぎる時間
大輝に渡した手紙の事も
忘れかけるほどだ
そんな日々がさらに1週間過ぎた時
俺はいつものように
駅の喫煙所で帰る前の一服をしていた
そこに大輝が入ってくる
この喫煙所は
大輝が乗るホームとは反対にある
動線上にはない場所
(なぜ?大輝がここに?)
いつものように
俺に目も合わせず
スマホに夢中になってる
(やっぱり相変わらずだな)
そう懐かしむような目で大輝を見ていると
スマホが鳴った
メッセージだ
[なんでいきなり辞めたんですか?]
見知らぬアイコンからのメッセージだった
名前を見てハッとした
多分大輝だ
大輝という名前ではないが
大輝を想像させる
俺は返した
[だって、興味ないでしょ?]
[最初は興味なかったです]
[わかってる]
[でも、気になってました]
[はい?]
[わかってるでしょ]
[わからない]
[やっぱり鈍感なんですね]
[どういう意味?]
[わからないならいいです]
俺「あのさ、どういう意味?」
思わず大輝の後ろ姿に問いかける
大輝「何ですか?」
俺「この意味は何だよ!」
大輝「…」
何も言わずに
大輝は喫煙所から出る
俺は追いかけながら
問いかけ続ける
俺「なぁ、なんでいつもそうなんだよ」
大輝「…」
俺「馬鹿にしてるのか?」
大輝は振り返りもせず歩く
そして
構内の端にあるトイレに入る
俺も後に続く
入って一瞬見失った
右を向くと大輝がこっちを見ている
そして
俺は個室に手を引かれた
窮屈な個室に2人
俺は少し怖くなった
大輝は耳元でこういった
大輝「こうやって…すれば良かったのに」
大輝は俺を確かに誘っていた
でも俺は
それを直接確かめるのが
怖かった
立場の違い
業務の違い
年齢の違い
それが俺を臆病にした
ただ見つめるだけ
意味の無い話しかけ
わかりづらいアピール
大輝はもっとストレートに
誘われたかったんだ
俺「だって…」
大輝「鈍感なんですね、洸太さん」
俺「何で俺の名前を?」
大輝「ネーム見てましたから」
俺「だったら…なんであの時」
大輝「一回でどうにかなると思った?」
俺「いや…それは」
二の句がつげない
俺は一回り大きい大輝に
そっと抱きついた
俺「これから…どうする?」
大輝「洸太さん、これからって?」
俺「どこか…」
大輝「あの手紙…洸太さんが自分で言ったんですよ?」
俺「えっ?」
そっと大輝から距離をとった
俺は手紙に
メッセージのIDを添えて
こう書いた
[ずっと気になっていました。でも今日で俺は最後です。もっと早く伝えれば良かった]
大輝「もう、過去ですよね?」
俺「いや、それは…」
大輝「人の気持ちは変わるんです」
俺「それは…大輝が…」
大輝「やれば出来たじゃないですか」
俺「…」
大輝「僕は、好きでしたよ」
俺「うん…」
大輝「じゃなきゃ、あんな風にしません」
俺「良かった」
大輝「今は違います」
俺「そうだよな」
大輝「僕だって、どう反応したらいいかわからなかったんです」
俺「俺もだよ」
大輝「タイミング…ですね」
俺「そうだな」
大輝「もう、行きます」
俺「わかった」
大輝の後ろ姿が小さくなる
それを見送った
そして
それぞれが反対側のホームで
電車を待つ
俺はいつも大輝の姿を追いかけ
遠くから見つめて
結局
それしか出来なかった
そんなので
伝わるわけない
そんなので
伝えられない
もっと
言葉や表情や態度で
伝えなきゃいけなかった
でも
大輝は
俺を
好きだったと
言ってくれた
嘘でも嬉しかった
一回りも違う
今風な雰囲気
それなのに
全然遊んでる様子もない
だから
好きになった…
わけではない
最初に言った通り
大輝は
俺のタイプ
単純に
身体が欲しかった
全身を攻めたてて
言葉で攻めたてて
未開発の部分に
じっくり捻り込ませて
苦痛と恍惚に
喘ぐ姿を見たかった
時には
逆に少し強引に
俺の口に熱く硬直した
肉塊を出し入れして
俺を雌のように
扱って欲しかった
それが最終到達点
最初から
そうなるように
誘えなかったのは
俺が自信を失っていただけ
あの頃とは違う
相応な魅力がある事に
俺が気付いていなかっただけ
それが
この結末の全てだ
今の喫煙所は18階
ガラス張りの眼下には
いつもの駅と
取り巻くオフィス街が広がる
駅の向こうに目をやると
大輝と俺が居たビルが
小さく見える
歩いて10分とかからない
そんな距離に
俺らは居る
3か月前
こんな風に
なるなんて想像もしなかった
俺ら以外には誰もいない
外からも誰にも見えない
ガラス張りの喫煙所
俺は
そこから
大輝の居るビルを眺める
俺にひざまずき
奉仕する蒼介に言う
俺「これ…欲しかったんだろ?」
蒼介「うん…洸太さん…僕でいいんですか?」
俺「蒼介…当たり前だろ」
蒼介「早く…後ろに…欲しいです」
下手すりゃ息子みたいな歳の
透き通るような白肌と
後ろから一つになる
繋がっているその間
ずっと聞くに耐えないような
言葉で喘ぎ続ける蒼介を
見ることなく
窓の向こうビルを眺めながら
俺は今日も満たされている
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