聖なるはかりごと(3)

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聖なるはかりごと(3)

ユーディット「……あらぁ……新入りちゃんからご指名を受けるとは、ゆめにも思わなかったわねぇ」 レナータ「うう、うるさい!! 新入りちゃんじゃない!! この、性悪天使(しょうわるてんし)がぁ!! 翼の数が多いからってぇ、いい気になってんじゃなぁいわよぉっ!!」 メルツェデス「ぁ、あのねぇ、新入りちゃん、いえいえ、レナータ……ま、まだ、私の話は終わってないの……いきなり、やらない、なんて言わないで話ぐらいは最後まで聞きなさい……」 レナータ「だってっ、だってぇ……イヤなんだもん! ……制服のデザインも、そこに座ってるそいつもぉ!」 ユーディット「フフフフフフ、これはこれは、レナちゃん……お得意の逃亡準備が整ったかな? ……あなたではできないことを、このわたしが代わりにやってやるわ。感謝なさい。……地上にいる鈍い人間レベルで、何もできないわよね……あなたってば」 レナータ「なぁにぃっ!? ここ、このおんなァァァっ!! 地上の人間とあたしが同じレベルですってぇッ!? ふっ、ふっざけやがってぇッ!!! ぶぶぶ、ぶっ飛ばすわよぉ!! もぉうッ!!!」 「あらあら、驚いた。レナちゃんったら。お顔が付いていたのねぇ? どんなときも、背を向けて逃げるから……後頭部しかないのかと思っていたの」  泣きそうなレナータを見て、ユーディットはにっこりした。 「はあぁぁんっ!!? このぉぉぉぉっ、ぉおんなァァァ、いつ逃げたあぁッ!? この、あたしぃがぁ、ああっ、おおぃ、こんのぉぉぉ〜〜……も、もも、も〜〜〜ぉうッ、は、はっ、腹立ち過ぎて、泣けてくる、こんちくしょーーが!!」  顔を真っ赤にしたレナータはユーディットへ詰め寄った。 「ぉお、落ち着いて……メルツェデスさん、ぼくとユーディットの写真をとってください。モデルはぼくらでやりますから、そ、それでいいでしょ? ね、メルツェデスさん……」  ジークはユーディットへつかみかかろうとするレナータを抱きしめた。 「あ、あぅあぅ、あいつうぅぅ……は、ぁぅ、はあ、はぁ、あああああ〜〜〜……ゆ、許せなぁぁぁいいいいいっ……」  彼に抱きついたまま、レナータは歯噛(はが)みしている。 「そ、そう?? んーまーその方がいいかもね……三人、写すとなったら、それはそれで構図が面倒だし……」  目前で起きている争いを阻止しようとはしないメルツェデスにユーディットは言った。 「……わたし、自信があります。先程からわめいている、愚か者とは違って」 レナータ「!! あーあーあー!! やめやめやめ! もう、我慢できなぁぁぁい!! 神聖で高貴な天使であるあたしが、どうして脆弱(ぜいじゃく)な人間を募集するためのポスターのモデルなんて、やる必要があるのよォッ!? あたしぃ、帰る! 帰る! い、行きましょ、ジーク!!」 ジーク「へ!? ぼくも帰るの?」 レナータ「どこでもいいから帰りましょ! ……自信あるってんだから、そいつに任せましょうよ!! いーでしょ、メルツェデス!! あたしとジークはこの件には参加しない! そいつとメルツェデスで好きにやってちょーだいな!! ……よくよく考えてみればさ、人間を操って悪事を行わせる悪魔を浄化するのが役割のあたしたちと、人間のお手伝いさんの募集は土台、無関係じゃない! あたしたちが、仲間の天使をクビにしたわけじゃないし!! ……ということで……素晴らしいポスターの完成、待ってるわよ!!」 ユーディット「フフフフフ……出来上がったのを目にして、レナちゃんの心が折れないのを祈るとしましょうか」 「くっ!! こいつぅぅぅ、いい言ってくれるじゃないの……さ、さぁ、ジーク、行くわよっ!!」 「ん、ううん!!?? あ、あ、わぁ、わわ……わわ、わっ……」  涙をぬぐったレナータはジークの手を取って、乱暴にドアを開けるや、そそくさと部屋から出ていった。
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