2人が本棚に入れています
本棚に追加
-17-
「あの子は私やお父さんの言うことは聞かない。でものぞみさんが言ってくれれば考え直してくれると思うの」
「え? どんなことをですか?」
「うちの病院をあの子に継いでもらいたいの。医学部にはなんとか入ってもらった。でもあの子は今、私たちに反発してる。自分の人生は好きにしたいって言うの」
「ひょっとして司法試験のことですか?」
「そう。だからのぞみさん。あの子には司法試験なんか受けずに、医者になって家を継ぐようにお願いしてほしいの。きっとあなたの言うことなら聞いてくれるわ」
「それは・・・」
「それからもうひとつ。あの子にバイクに乗るのを止めるように言ってもらえないかしら」
「・・・どうしてですか?」
「あんな危ない乗り物。いつ事故にあうか、心配でたまらないの」
「空さんの運転は慎重で安全です。それほどお気になさらなくても・・・」
「空が悪くなくても、事故に巻き込まれた時に死ぬのは空です」
のぞみは言葉が出なくなった。
「ごめんなさい。会ったばかりのあなたにこんなことをお願いして。でもね。それは私たちからの心からの願いなの。頼んだわよ、のぞみさん」
「・・・はい」
「じゃあ、料理を続けましょう」
何事もなかったように、葵は調理を続けた。のぞみは葵を手伝いながら、草刈に何と言おうかとずっと考えていた。
最初のコメントを投稿しよう!