私が好きなもの

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        -17- 「あの子は私やお父さんの言うことは聞かない。でものぞみさんが言ってくれれば考え直してくれると思うの」 「え? どんなことをですか?」 「うちの病院をあの子に継いでもらいたいの。医学部にはなんとか入ってもらった。でもあの子は今、私たちに反発してる。自分の人生は好きにしたいって言うの」 「ひょっとして司法試験のことですか?」 「そう。だからのぞみさん。あの子には司法試験なんか受けずに、医者になって家を継ぐようにお願いしてほしいの。きっとあなたの言うことなら聞いてくれるわ」 「それは・・・」 「それからもうひとつ。あの子にバイクに乗るのを止めるように言ってもらえないかしら」 「・・・どうしてですか?」 「あんな危ない乗り物。いつ事故にあうか、心配でたまらないの」 「空さんの運転は慎重で安全です。それほどお気になさらなくても・・・」 「空が悪くなくても、事故に巻き込まれた時に死ぬのは空です」  のぞみは言葉が出なくなった。 「ごめんなさい。会ったばかりのあなたにこんなことをお願いして。でもね。それは私たちからの心からの願いなの。頼んだわよ、のぞみさん」 「・・・はい」 「じゃあ、料理を続けましょう」  何事もなかったように、葵は調理を続けた。のぞみは葵を手伝いながら、草刈に何と言おうかとずっと考えていた。    
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