0人が本棚に入れています
本棚に追加
レイナ・スミスは、日系アメリカ人だ。
25歳の女性で、ロサンゼルスに住んでおり、最近結婚したばかりだった。
敬虔なクリスチャンの彼女は、毎週日曜日は教会のミサに必ず参列していた。
ある日曜日の野外ミサにも、当然彼女は参加した。野外ミサとは、文字通り教会の外で行われるミサである。普段教会に通わない人でも、誰でも気軽に来場し、聖歌隊の歌を聞いたり、パンやぶどう酒などを振る舞われて楽しめる、日本の縁日の様なイベントだ。
その野外ミサの最中、レイナはふと空を見上げた。雲一つない晴れやかな青空だった。
その青空から、レイナのもとに、天使が舞い降りて来た。
背中に白い羽を生やし、髪の毛は金髪でクルクルとした、絵画の様な可愛らしい子供だ。
降臨した天使は、真下にいたレイナの体の中に溶け入る様に消えた。
驚愕しながらも、新婚のレイナは思い立った。
(もしや私は妊娠していて、その胎内の赤子に天使が宿ったのではないか?)
慌てて家に帰り、妊娠検査薬を使うと、やはり陽性で、赤子を身籠っていた。
レイナは感激した。
(この子は天使の生まれ変わりなのだ! 将来はさぞや立派な人物になるに違いない!)
後日、レイナは元気な男の子を出産した。まさに天使の様に美しい子であり、母親となった彼女の息子への期待は大いに膨らんだ。
(きっとこの子は聖人になる!)
やがて大人になった彼女の息子は——20人もの女性を惨殺し、凶悪な殺人鬼として逮捕された。
あの野外ミサの日、レイナのもとに青空から降下した天使は、舞い降りて来たのではなく、落ちて来たのだ。
つまり、堕天使。
悪魔だった。
最初のコメントを投稿しよう!