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1話 死んだはずなのに…
楓は、家族に囲まれて…
死の瞬間を迎えていた。
みんなの姿がボヤけてきて…
意識がどんどん遠のいていく…
みんなの声も薄らいできて…
ある瞬間…意識がなくなった。
―――私、ついに死んじゃったんだね…
そう、思っていたら…
ん⁉そう思えるの?
なんで?
死ぬって「無」になることだと思ってた…
そう考えていると…
神様みたいな恰好をした人が現れた…
「一度だけ戻りたい時代に行かせてあげよう。いつが良いか?」
「えっ、戻れるんですか?」
「一度だけだ。期間は…1年。いつにするのだ?」
楓は、考えた…
―――期間限定なんだよね…
―――幸せだった時に戻りたいけど…
―――もう一度、やり直すなら中学の時がいい
―――剣と付き合い始めた時に戻ってやり直したい
楓は…
「中学2年の10月に戻りたいです」
と神様に伝えた。
「わかった。ただし期間は、1年のみだからな」
「分かりました。よろしくお願いします」
そう言った途端に…
身体が宙に浮いて、グルグル回って…
意識が無くなった…
目を覚ますと…
そこは、中学校の教室だった。
―――マジか~
―――本当に戻ったよ…
そう考えていると…
ベルが鳴って…
「楓、昼休憩終わったよ!起きないと…」
と祥子が起こしてくれた。
―――祥子。若い…
「あっ、ごめん。寝てた〜ありがとう」
それから、授業を受けて…
次の休憩時間になった。
―――剣はちゃんといるかな?
剣の教室に行ってみると…剣がいた。
―――剣…やっと会えたよ…
―――ずっと会いたいって何年も思っていたんだよ…
―――でも、若い剣だけど…
確か…この時はまだ付き合ってなかったはず…
「剣、好きな人教えて」
「楓は、しつこいなー」
「いいじゃん、教えてよー」
「今度な」
「そうですか…絶対に今度教えてよー」
「分かった、分かった…」
―――懐かしい…
―――また、こんなやり取りが出来るとは思ってなかった…
―――せっかく貰った期間限定…
―――今度は、気の迷いなく剣と付き合う!
―――そう決めた。
―――でも、1年後には、お別れしなきゃいけないのが怖い…
―――それでも、私は…剣と向き合うんだ…
家に帰ると…お父さんが元気だったから
楓は、涙が止まらなかった…
つい昨日まで、お婆ちゃんだった楓は…
今日、半日だけでも疲れた。
でも…
中学生の気持ちや行動に戸惑いながらも
これから、始まる剣との生活にワクワクして…
眠れなかった…
今日から、来年の9月30日まで…
剣だけを見て…
絶対に別れない…
今度こそ…
楓は、そう心に決めた。
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