圧殺の街 ハラスメント 文字数は20,000文字以上

第12章 医師の影

　石田は、刑事を辞めた後、再スタートを切るべく医療事務の職に就いた。彼は人の役に立ちたいという思いからこの職を選んだが、思いもよらぬ現実が待ち受けていた。勤務先は中規模のクリニック。穏やかな雰囲気が漂っていたが、その裏には暗い影が潜んでいた。

　初日、石田は先輩医師の藤井に挨拶を交わした。
　藤井は西島秀俊に似ている。
　彼は優しそうな人柄だったが、徐々にその態度が変わっていくのを感じた。忙しい診療の合間に、藤井は石田に対して不満をぶつけるようになった。

「もっと効率的にやれ！」という叱責が、最初は注意として受け取れたが、次第にその内容が厳しくなり、周囲の同僚たちも薄ら笑いを浮かべるようになった。

　石田は毎日の業務をこなしながらも、藤井からのドクターハラスメントに苦しむようになった。些細なミスや手違いに対して、彼の叱責はエスカレートし、診療所内の他のスタッフも次第に冷たい視線を向けるようになった。

「お前、何を考えているんだ！」と、藤井が大声で怒鳴る度に、石田は心が折れそうになった。彼は周囲に助けを求めたい気持ちがあったが、誰も助けてくれる様子はなかった。

　ある日、石田は診療中のミスを指摘された。藤井の怒りは頂点に達し、彼は石田の前で周囲に聞こえるように叱責した。「こんなことで医療事務をやるなんて、到底無理だ！」

　その瞬間、石田は涙をこらえられなくなった。周囲の同僚たちが冷たい目で彼を見る中、彼は自分の居場所を失ったと感じた。帰宅後、彼は自分の選択を悔やみ、再び過去のトラウマが蘇った。

　石田は自分の状況を変えなければならないと決意した。まずは、信頼できる同僚に相談することにした。彼は勇気を振り絞り、藤井の行動について話した。その結果、数人の同僚も同じような経験をしていることが分かり、彼らは団結することを決めた。

　石田は医療機関の人事部に正式に相談することを決意した。周囲のサポートを受けて、彼は藤井の行動に対する正式な苦情を申し立てた。これにより、クリニック内での調査が始まり、藤井も事情聴取を受けることになった。

　数週間後、石田は藤井の行動が改善されることを期待しつつ、再び職場に戻った。彼は新たな決意を持って業務に取り組むことができるようになった。周囲の同僚たちもサポートしてくれ、少しずつ職場の雰囲気が改善されていくのを感じた。

　石田は、ドクターハラスメントを乗り越えたことで、自分自身を取り戻し、医療の現場で人を助けるという使命感を再確認した。彼はこれからも新たな道を歩み続ける。