第7章 カスタマーハラスメントの影

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第7章 カスタマーハラスメントの影

 石田は東武署の生活安全課に異動し、新しいスタートを切った。警察官としての経験を生かし、地域の安全を守るための任務にやりがいを感じていた。だが、彼が思っていた以上に、現実は厳しかった。  生活安全課では、カスタマーハラスメント(カスハラ)が増加しているという報告が相次いでいた。特に、商業施設や飲食店におけるトラブルが問題視されており、石田はその対応に追われる日々が続いた。店員や従業員からの相談を受け、彼は聞き手としての役割を果たしていた。 「もうやってられないよ!」という嘆きの声が多く寄せられ、石田も次第にその重圧を感じるようになった。  ある日、商業施設でのカスハラの相談が入り、石田は現場に急行した。中森明菜に似た女性店員が、客から理不尽な要求を受け、精神的に追い詰められている様子だった。 『少女A』とか『禁句』とかいい曲がたくさん。  石田は彼女に寄り添いながら、状況を冷静に聞き取る。 「何があったのか、詳しく教えてください」と声をかけ、彼女の話をじっくりと聞く。女性は涙ながらに、自分がどれほど辛い思いをしたかを訴えた。  石田は、カスハラに対する啓発活動が必要だと感じた。彼は署内での研修を提案し、地域の商業施設と連携することを目指す。店員や従業員が、トラブルにどう対処すべきかを学ぶ場を提供することで、彼らの自信を取り戻させたかった。 「私たちがサポートします。あなたは一人ではありません」と、石田は強調した。  数週間後、石田の提案が実現し、地域の商業施設でカスハラ対策の研修が行われた。参加者たちは、自分たちの経験を共有し、具体的な対処法を学ぶ機会となった。石田は、話しやすい雰囲気を作りながら、参加者たちに寄り添った。  研修の終わりには、参加者たちから感謝の言葉が送られ、石田はその充実感に包まれた。自分が少しでも役に立てたことを実感し、彼の中で新たな決意が芽生えた。  研修後、石田は定期的に参加者からのフィードバックを受け、問題点や改善点を探ることにした。地域の商業施設でのトラブルは減少し、従業員たちの自信も徐々に回復していった。  石田は、彼らが少しずつ明るい表情を見せるのを見て、やりがいを感じるようになった。カスハラに対する意識が高まり、周囲の支援があったからこそ、この変化が生まれたのだと感じた。  石田は、カスタマーハラスメントの問題を通じて、人々の支えとなり、新たな使命感を見出した。地域の安全を守るため、彼の戦いはこれからも続く。
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