27 エリアン

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27 エリアン

 小天体が耕作地や山岳地や河川などあらゆる地域に落下した。各国で隕石が降ってきたと大騒ぎになった。  しかし、小天体は人が暮す地域と海には落下しなかった。人々はそれを誰も不思議に思わず、むしろ、幸運だと思った。  それから一ヶ月もすると市民の暴動が始まった。  原因は肩が触れたなどいう些細な事ばかりだったが、暴動の矛先は交番や警察署へ向かった。警察も政府も原因がわからなかった。 「何のために警察署を襲った?答えろ」 「・・・」  宮本刑事の尋問に、逮捕した暴動の主導者らしき男は何も答えない。そればかりか、言葉がわからないらしく、聞いたことの無い言葉を発している。挙げ句、手錠を引き千切ろうとして、自分で手首から先を引き千切ってしまった。 「何てこった!正気が?」  尋問している刑事がそう言っているあいだに、男はもう片方の手も手首から引き千切った。  こいつ自虐性異常者かと刑事は思った。そして、異様な事に気づいた。大出血すると思った男の手首から、たいして血が出ていない。とにかく医師を呼ぼうとインタホンのボタンを押したとき、同室している記録係が刑事に男の異変を告げた。 「宮本刑事!男の手が!」  尋問していた宮本刑事は、アニメ映画を見ているのではないかと自分の目を疑った。男の千切れた片方の手首から、植物の芽が伸びるように手が再生して腕が再生し、もう片方の千切れた手首から先には腕が再生している。  宮本刑事は思った。 『手首から手が再生し、もう片方の手首から腕が再生してる。  ということは、新たな身体が二体現われるのか・・・。  こいつ、人間じゃねえ!』 「相馬記録官!ここから逃げろ。急げ!」  記録官は事態を察し、 「宮本刑事も急ぎましょうっ!」  取調室を出た。  取調室の隣室には、尋問の様子を監視する刑事課の課長たちがいた。マジックミラー越しに取調室を見ると、男は取調室の椅子に座ったまま、手首から先が再生するのを待っていた。机の上の両手首からは、腕が再生して肩が再生して頭が再生した。その後は再生速度が早くなった。 『こいつの再生の要は、頭か?』 「相馬記録官。しっかり録画しろ!課長!銃を取ってくる!」 「許可する。急げ!」  刑事課の課長の許可を得て、宮本刑事は刑事課の銃器保管庫からベレッタ 92FS VERTECサイレンサーを持ってきた。取調室に入ると、手から再生したふたつの頭を撃った。ベレッタ 92FSのマガジンにはエクスブローダー弾が装填してある。  被弾したふたつの頭は爆発するように吹き飛んだ。残った肩から先は二度と再生しなかった。 「相馬記録官!しっかり録画しとけ!」  宮本刑事は取調室で大声をだした。 「はい!」 「刑事課長!こいつも撃っていいな!?」 「人間じゃない!上の許可など不用だ!撃てっ!」 「了解!」  宮本刑事は取調室の椅子に座っている男の頭を撃った。 (了)
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