14 私のステージ

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「な、なんだよ……」  急に貴志の態度が弱くなる。  最近すっかり忘れていた。というか、あまり気にしたことが無かった。  思い返してみれば、貴志はこういう態度に弱いのかもしれない。前の私は元々弱々しかったから、貴志の好みだった、ということか。あいにく、今の私はもうあの頃の私とは違う。  貴志の今の本当の私を見たら、ドン引きするに違いない。そんなこと知ったことでは無いが。  今更、貴志が気に入る態度を取って好かれようとは全く思わない。  ただ、利用はさせてもらう。 「美歩がどうしてもって言うなら、うーん。その日も休日出勤の予定だったけど、平日頑張ってみるよ」 「本当!? 嬉しい!」  私は大げさに喜んでみせた。  もちろん、本当は休日出勤ではなく、不倫相手の桃香とのデートだということはわかっている。調べはとっくについている。  仕事なのだからと前は遠慮して、どこかに行きたいなんて言ったことがなかった。今になって言えるようになるなんて思わなかった。  貴志の方も、たまには私のお願いも聞いておかないと疑われるとか考えているのかもしれない。  が、そんな貴志の都合なんてどうでもいい。とにかく、一緒に行くという約束を取り付けることが出来てよかった。来てもらわなければ始まらない。
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