14 私のステージ

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 私は取ってあった席の方を見る。もったいないけれど怪しまれないように私の分も合わせて二席取った。  いた。貴志だ。  来る前に嘘を吐いて、出場する知り合いに先に会いたいからと席で待ち合わせすることにした。前の大会のときにも知り合いが出ると言ってあったからか、すぐに信じてくれたのがありがたかった。  貴志は、馬鹿みたいに口を開けて私のことを見ている。それを私はステージの上から見下ろしている。  気持ち悪いとか言っていたのに、貴志は私のことを目を離さずに見ている。 今でも気持ち悪いと思ってる?  でも、そんなの関係ない。  私は、私のことを美しいと思っている。努力して鍛え上げた筋肉。それをまとった私は美しい。  もちろん、結婚指輪なんか今日は外している。  今の私にはもう不要な物だ。 「28番、キレイだよー!」  歓声が飛ぶ。  28番。それは私の付けている番号だ。  知らない選手が出ていて名前がわからなくても声を掛けたい場合、番号を呼ぶ。  私の知らない誰かが、私の筋肉を見てキレイだと言ってくれた。  それが、とても嬉しい。
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