14 私のステージ

5/12
前へ
/100ページ
次へ
 決勝に残れなかったのは気にしていない。ここまでこられただけで、本当に嬉しい。  もちろん負け惜しみなんかじゃない。決勝まで行けなかったといって、やめるつもりもない。いつかはそこまで行ってみたいとすら思う。  今はここまで来ただけで嬉しいというだけだ。  今の私なら、何でも出来る気がする。  出番が終わった私は、客席へと向かっていた。まだ岸本コーチは残っているのでそれを見たいのもある。だけど、もっと大事なことがある。  この勢いで言ってしまうつもりだ。  もしも、私が今日の夜死んでしまうとしてもやっぱり伝えておきたかった。  客席に向かうと、まだそこには貴志がいた。  私と目が合うと、さっと立ち上がって行ってしまう。 「ちょっと、待って!」  まだ決勝も見ていたいのに。  それでも、私は貴志を追いかけた。  そして、会場のロビーに逃げ出した貴志の腕を掴んだ。 「観客として来たんじゃないのかよ。お前が出るなんて、き、聞いてないんだけど! つか、なに? あの筋肉。お前、体弱いんじゃなかったのかよ。気持ち悪いんだよ!」 「ああ、そう」  私はそれだけ答えた。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

256人が本棚に入れています
本棚に追加