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「離したら逃げるでしょ?」
そもそも、貴志は私の手を振りほどけない。その自信が私にはある。それだけ、この一年鍛えてきた。
貴志はそんな私の変化にすら気付かなかった。
「貴志に話があるの。だから、聞いてくれるまで離さない」
「な、なんだよ」
「私と離婚して欲しい」
「は?」
貴志の顔が引きつる。
「い、いきなりなんなんだよ」
突然言われて動揺している。こんなところでそんなことを言われるとは思っていなかったみたいだ。
「訳がわからないんだけど。まさか、本当に筋肉男と浮気でもしてるのか? 気持ち悪すぎだろ、それ」
もはや、ため息すら出ない。
私はきっぱりと言った。
「浮気してるのは貴志の方だよね」
「ああ? な、なに言ってるんだ?」
混乱しているのか反応が幼稚だ。
貴志の目が、目に見えて泳ぐ。
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