0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あーあ。キレイな白だったのに。」
私の後ろで、もう聞き慣れた姿も見せない声が嘲笑った。
何も感じない心がチクリと傷んだ気がして、目を伏せる。手の内にある空になった瓶が冷たい。
「元々、こんなもん。」
自分を苦しめるように。“死神”を責めるように。口から出た声は、思ったよりも低くて、重かった。
そんな僕の気持ちを見透かしてか
「堕天使もキレイでいいよね!」
なんて明るい声で抜かすもんなので、瓶を投げてやろうかと思う。そんな体力も精神力も残っていないのでやめたが。
「美味しかった?」
疲れ切っている僕にまたもや質問を投げかけてくる“契約者”に、若干イライラを募らす。
「無味。」
空になった瓶の中身は無味。人の闇だから美味しいとは思っていないのだが、無味とはなかなかに酷い。水ですら味がするというのに。
最初のコメントを投稿しよう!