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「それとも五分、十分、僕と散歩でもします?」
散歩しても良いけど他の先生に見つかったら怒られそうだからさっさと化学室に行くにゃ。
「では行きましょうか」
聞けし。
あっ、僕は猫だから人間に言葉が通じなかったんだったにゃ。
季優に抱っこされたまま二人で三階の化学室周りをぶらぶら歩いていると「あ」と季優は言って壁に張られた一枚のポスターの前で足を止めた。
「これクラスの子達が言ってた美術部の野々口さんが描かれた例のポスターですね」
-〈注文の多い料理店〉『ぎゃー!』青冷めた紳士より。-と書かれたタイトル。描かれている今にも食べられそうになっている紳士の顔があまりにもリアルな恐怖画になってるにゃ。え、注文の多い料理店って小学生の国語の教科書とかに載る宮沢賢治の児童文学だよにゃ?最後何とか帰った後も経験した恐怖から紙くずのようにくしゃくしゃになった顔がお風呂に入っても何しても治らなくなっちゃったってのがちょっと怖いサスペンスのような話しだったけど…野々口の奴どれだけ怖かったのか分からにゃいけどコレじゃ児童文学じゃ無くてただのホラーにゃ…。
「…わー…怪奇的ですね」
僕はこのポスターの上に布でも被せて見えなくしたいくらい恐ろしくて身震いが止まらないにゃ。
「にゃう…」
朝から不気味な絵を見たせいで気分が悪くなってきたにゃ。
本人は柔らかそうな感じに見えて描くものはエゲツない、野々口の本当は心の中真っ黒なんじゃにゃいの?
※野々口さんはとっても優しい女子生徒です。
「これ、県の造形教育作品展で入選したんですって」
えっ、入選したの!?
「さすがに優秀賞は取れなかったらしいんですけどね。山猫のレストランで経験した二人の紳士の恐怖で震える様子と山猫がニヤリと笑った表情を対比させて描いたところが この物語の世界観を良く表現出来ているって選ばれたんですって。凄いですよね、こんな絵描けて」
なぁ、お前が今言った“こんな絵”って良い意味で言ったにゃ?もし違うなら悪口だからにゃ?
まぁ今回は野々口が可哀想だから良い意味で言った事にしておくからにゃ?
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