──染まる、

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……──菜々先輩は。 「俺、好きな人がいるんだ」 有暉の首元にキスマークを見つけてしまったあの日。 放課後、私は屋上に呼び出された。どこよりも青空に近いここで一度伸びをしてから、有暉は苦しそうに笑ってそう言った。 「誰だと思う? ……姉貴の友達の、伴野菜々」 そんなに苦しそうなのに、私に言う必要あるのだろうか。好きな人の名前まで、私に言って何かメリットがあるのだろうか。 それにその人のことは知っていた。多分、この学校の人ならみんな知ってる。美人で高嶺の花だって有名で、男子なら皆誰もが一目でも彼女の姿を見たくて、女子は彼女が憧れだって子も少なくない。 誰もが知る、美人で綺麗で高嶺の花、有名な先輩。 「けど、菜々さんは俺のこと……こういう風にしか思ってない」 有暉は自分で首元を指して──それがキスマークを指していると気付いて、察した。それを付けたのは、菜々さんで、きっとそういう関係。その時の切ない表情は、今も昨日のことのように鮮明に思い出せる。 「……もう、嫌なんだよね。どうやったってあの人は俺のこと見てくれない」 弱々しく吐き出されるセリフたち。今日まで喋ったこともなかった相手に自分の弱みを見せるなんて、新川くんは何を考えているんだろう、なんて当時は思った。
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