──染まる、

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──染まる、

*・゚・* きみと初めて喋ったのは、席替えで席が前後になった時だった。 それまで一度も話したことのなかったきみが私の前の席になって、プリントを回すためにきみが後ろを振り向いた瞬間に、見えてしまった。 私が固まってプリントを受け取れずにいると、きみは──新川(しんかわ)有暉(あき)くんは、私の視線に気づいたようで。 視線を彼の顔の方に戻すと、一瞬驚きを滲ませてから彼はすぐ余裕そうにふっと口角を上げた。話したこともなかった新川くんのその表情は当然に初めて見るもので、心臓がドキッと跳ねるのがわかった。 「──ねえ、内緒ね?」 人差し指を唇に当てながらそう言った新川くんはやけに色っぽくて。同じ高校生には見えないくらい、色気を滲ませて妖しく笑っていた。……そう感じたのは、振り返った時シャツの隙間から見えてしまった“赤い跡”のせいかもしれないけれど。 ただ間違いなくその瞬間から、何故だかきみにドキドキが収まらなくなってしまった。その“赤”に、目を奪われてしまった。
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