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 彼が指定したファミレスが、とうの昔に今風の簡易的なスポーツジムに変わっていることを伝えると「そうか、そんなにも帰ってきてなかったんだな」と電話越しでも苦笑いが伝わってきた。  吉澤(よしざわ)からLINEが届いたのは久しぶりだった。  一つ前の履歴が三年前になっているから、だいぶ交流も薄れてきていたってことだろう。  そんな彼が久しぶりに富山に帰ってきたので会わないかと連絡をしてきた。 「それだったらサッカー部の奴らも何人か呼ぼうか?」  と僕は提案してみたが 「あまり大勢で集まると、どこで写真を撮られるか気を張るのが苦手でね、今回は山瀬(やませ)とだけにしよう。サッカー部連中はまた次の機会に」  吉澤がそう言うならば仕方ない。  彼の提案したファミレスはとうに潰れてしまっていたので、僕はコーヒーショップを提案し、地図の乗ったURLを送った。 「富山のどこに何のお店があるかわからないからありがたい」  吉澤は富山出身とは思えないほどに、町の地理に疎くなっていた。
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