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天使は、慈愛に満ちた表情のまま、告げた。
「鼻歌ランキングです」
「・・・・へ?」
あまりにも思いがけなくて、俺は思わず声が出た。
「・・・・なんすかそれ」
「鼻歌ランキングで、今年度あなたの『go home』が上位にランキングしたのでお伝えに来ました」
相変わらず神々しい天使の姿と、発せられた言葉のギャップに、俺はフリーズした。
天使は涼しい顔で話し続けた。
「人は苦しいとき、行きづまったとき、鼻歌を歌います。神は、無意識に歌われる鼻歌を、人の心を最も救う歌であると評価をされました。だから、その年に一番人の心を救った鼻歌を表彰しているのです。私は神から言いつけられ、あなたの『go home』を表彰しにまいりました。これが、メダルです」
天使は、うやうやしい手つきで俺の首にメダルをかけた。鈍い金色に光っている。
「あの・・・これは何かいいことがあるんですか?」
「いいえ」
天使はにこやかに言った
「このメダルはあなた以外の人には見えません。持っていたからと言って魔物除けにもなりませんし、運命が変わることもありません」
「そう・・・ですか」
「はい。でも、あなたの道しるべになるでしょう」
「道しるべ・・・・」
「あなたの歌は、たくさんの人の心を解きほぐし、苦しいときの救いになりました。そのことを神は私を通じてあなたに告げました。あとは・・・」
「あとは?」
「あなた次第です。あなたの胸に輝くあなたにしか見えないメダルは、あなただけのものです。それをいかなる道しるべにするかはあなた次第なのです。あなたに祝福あれ」
再び天使にスポットライトが当たった。雲の切れ間からまた光がさしたのだ。
天使は慈愛に満ちた微笑みのまま、天に昇っていった。
モノクロームの世界に色が戻る。俺は、誰にも見えないメダルを胸に抱きしめて、とりあえず歩き始めた。
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