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感慨もそこそこに高い位置から駅へ向かう人の流れを見下ろす。
僕の抜群の視力は、小さな公園の植え込みの横にポツンと佇む、さくら色のスプリングコートのユイを見つけた。
風を切り、急降下で舞い降りる。
久しぶりの飛翔だったけど、感覚は鈍っていなかった。
普通の人間には見えない僕の姿は、地上に影さえ落とさない。
普通の人間には見えない僕の羽根が一枚、ひらりと彼女の目の前に舞い落ちた。
ユイが目を丸くし、信じられないと言った表情で僕を見つめて来る。
僕は泣き笑いのような顔をするしかなかった。
手に握った、薄桃色の封筒をユイにそっと見せる。
「タカト……」
「うん、これ、君が僕にくれたお別れの手紙。僕の手紙は、あの部屋のテーブルに忘れてきた。でも、もういらないね。だってたぶん……」
ユイが真っ直ぐ僕を見つめ、泣き笑いを浮かべる。もうすべて理解できたみたいだ。
「たぶん、私の手紙と同じ事が書いてある」
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