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朝、リビングに行くと、食卓には僕の大好きなパンケーキが乗った皿が置いてあった。
焼きたての良い匂い。生クリームと艶やかなイチゴまで添えてある。
「ユイ、朝から焼いてくれたの?」
感激しながら同棲中の彼女に訊くと、彼女はエプロンを外しながら、にっこりほほ笑んだ。
「タカトの喜ぶ顔が見たかったの」
照れたようにそう言うと、ユイはいつもの様に出勤の用意を始めた。
忙しい合間を縫って、いつも僕に最善を尽くしてくれる。
とても愛おしい人。
けれど、結婚は出来ない。
「ねえ、ユイ、ほんのちょっとだけ、話をしない?」
勇気を出して切り出してみた。ついさっきまでは、言わないつもりだった。
けれどパンケーキの優しい香りが心を揺り動かす。
「ごめん、電車に乗り遅れちゃうから、またあとで。今日のパンケーキ美味しいと思うから、ゆっくり味わって食べてね」
僕の勇気など知る由もないユイは、いつもの様に爽やかに笑うと、軽く手を振って玄関ドアを飛び出して行った。
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