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彼をずっと諦められず、かと言って、彼と恋人になれるでもなく、他の誰かを好きになる事も出来なかった。
けど、今は、彼の死を受け入れる事で、報われない苦しみに苛まれる事もない。
《次は、◯◯、◯◯……》
車内のアナウンス。
僕の降りる駅が近付いてきた。
電車が停車し、ドアが開く。僕は椅子から立ち上がると、電車を降りて、階段を上がる。
改札を通り、また階段を上がり、地上へ出た。
雪が、静かに降り注いでいた。
今日は朝からずっと、降り注いで止まない。きっと明日には、積もってる事だろう。そう思いながら、ゆっくりと家路を歩いた。だが、あまりの寒さに、僕は両手をポケットに入れると、ゆっくり歩く足を速める。
「寒い…。早く暖まりたい」
そう呟いて、急ぎ足で自分のマンションへと向かった。
エレベーターで5階へ行き、鞄から鍵を取り出す。
「…やっぱり」
506号室のドアノブにかけられた、一つの黒い紙袋。
最近、毎日のように、僕が仕事から帰って来ると、この紙袋がこうしてドアノブにかけられている。
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