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『正雪、仕事中にごめんね。あのさ、おじいちゃんがね…』 ある日、珍しく母親が携帯に連絡を寄越して来た。比較的近くではあるが別居している母親からだ。仕事中だったから簡単に聞き、あとから折り返すと伝えその時は通話を終わらせた。 仕事が終わって19時。職場から歩きながら母親に電話を掛けた。 「…そう。ありがとう…」 ────────── 僕は幼い頃からじいさんを見て育った。うちのじいさんは比較的大きな人だと思っている。友達のじいさんをちゃんと見た事はないが、果たしてここまで背が大きかったか?と思っている。 僕が子供の頃のじいさんは本当に大きく見えて、何でも出来そうな人のイメージだった。釣りにも連れて行って貰ったし、川遊びにも連れて行って貰った。僕がじいさんにとっての初孫だから、と言うのもあったのだろう。様々な場所へと連れて行って貰った記憶がある。多分僕はじいさんに愛されていたんだと思うよ。でもじいさんは不器用だ。反抗期もあって、それが僕にはわからなくなった。 僕は正雪(まさゆき)。じいさんにとっては初孫となる。じいさんとばあさんには孫が6人。それぞれ自立している。 ある日の昼休み、母親から電話があった。折り返してみれば、まぁそれは仕方ないだろう的な内容だった。 『正雪、ごめんね。おいじちゃんなんだけど、余命あと1ヶ月なんだって』 寝耳に水、と言われればそうかもしれない。でもまぁ、じいさんの年齢を考えればおかしくはない。じいさんの生まれ年、僕の生まれ年を考えれば遅めの孫だったのかもしれない。 僕の中のじいさんはとてもではないが死ななそうな人だった。たまに体調不良で入院する事はあっても、そのうち退院してまたばあさんの為に買い物へと出向く。そんなイメージだったのだ。 仕事帰り、歩きながら母親の話を聞く。発端は4ヶ月前。小さな体調不良を起こし、そこから感染症に罹患した。感染症そのものは比較的大した事もなく何とかなったが、もうひとつの小さな体調不良が思いのほか尾を引き、結果としてじいさんが死ぬまで入院となった。最後の数ヶ月は病院で、静かに一気に老いた形となる。 ただその前に、ばあさんの話がある。 ばあさんは、じいさんが旅立つ丁度1ヶ月前に旅立ったばかりだった。
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