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私は眉間にしわを寄せ、しばし彼女を観察した。
テンションは少しおかしいものの、私の専門も正しく認識しているし、私から学びたい理由も理解できる。
何より、少なくとも私自身に近づきたいがためではなさそうで、正直安堵した。これは決して単なる思い上がりではなく、毎年本当にその目的でゼミに入ろうとする学生は多い。年齢不詳の外見が興味を引くのかは知らないが、とくに恋愛感情を拗らせた学生から身勝手に接近されるのは、職務面でも精神面でも最も嫌っていることの一つだった。
彼女に興味が出てきた私は、さらに質問を掘り下げることにした。
「そもそもどうして宝石学に興味があるんだ?単純に、宝石が好きとか?」
彼女は、はい!と嬉しそうにうなずいた。
「でも宝石に限らず、石全般が好きなんです。」
「…なぜ?」
彼女は大きな瞳をきょろっと瞬かせる。
「そもそも、石って無機質だけど、人間と同じように何かを考えたり、思いを持ったりすると思っていて。あ、霊感とかスピリチュアルとかそういうんじゃなく…もっとこう、生物に近いニュアンスで。」
私は静かに身を乗り出した。「続けなさい。」
「鉱物の中には、人体を構成する物質がたくさん含まれている。それに、彼らは人間よりずっと長い歴史を経験してる。
だから、ただ、伝えるすべがないだけで、本当は人間よりとてもたくさん、考えたり、語るべきことを持ってるんじゃないかって思うんです。石の歴史を勉強することで、そういった可能性に少しでも近づけたらな~って思います。
あ、それに、石を大切にしてきた人間の文化や歴史にもとても興味があります!私自身、石が大大・大好きなので!!」
彼女の言葉の何かが、心の奥に刺さった気がした。
私は小さく頷いて、彼女の研究に協力することを決意する。
…この娘からは、他の人間とは違う『何か』を感じる。
「本気でこの分野に興味があるようだから…空いた時間でよければ、質問に答えたり、資料を読み解く手伝いをしよう。」
「ほ、本当ですか?本当にありがとうございます!!」
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