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彼女は私に抱きつかんばかりの喜びようで、私は我々を隔てるデスクに密かに感謝した。
では今日はこの辺りで…と言いかけたが、彼女は何やらかばんの中に手を突っ込み始めている。
「今、ちょっとお時間ありますか?早速お伺いしたいことがあるのですが…」
「なんだ?…まさか、いきなりか!?」
「ええ、最近、この文献に挑戦しているのですが…」
ちょうど時間が空いていたのと、彼女が出してきた文献が本当に興味深いものだったこともあり、私はまんまとそのペースに乗せられてしまった。
「まぁいい…見せてみなさい。」
・・・
夢中で話し込んでいたら、あっという間に外は暗くなり始めていた。
「さて…そろそろ解散で良いか?」
「あ、すみません、こんな時間まで…つい、その、楽しくて。」
彼女は頬を赤らめながら、文献をかばんにしまう。
…正直言って、私もだ。
ここまで自分の研究について、熱心に学生と語り合ったのは初めてだ。彼女の知識量、洞察力は、大学2年生とは到底思えないほどのものだった。本当に、日夜独学で努力しているのだろう。思わずこぼれそうになる笑みを抑えながら、私は何気ない風を装った。
「明日は2コマ目がオフィスアワーだ。良ければ明日もここへ来るといい…まあ、君以外にこんな話をしたがる学生はいないから、いつも貸切状態だ…会君、と呼んでも?」
彼女は満面の笑みでうなずき、絶対来ますと息巻いて去っていった。
『とても面白い人間』だった…
…とんでもない奴も、この世にはいるものだな。
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