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父に子供だと言われたことに蒼はムカッときていた。
自分の部屋に戻ると勉強を始めた。父は高卒だ。中規模の企業の一応課長補佐だ。ビールを飲みながら、だらだらと野球やお笑い番組を観ている普通のオッサンだ。
蒼は、本当に勉強が出来た。これは、母の遺伝だ。母は国立大出の研究職だ。母と蒼は顔も似ている。真面目な顔をすると「怖い」と言われる。小さなころから身体が小さかった蒼は、父の勧めで少林寺拳法の道院に小学3年生から通っていた。
少林寺の影響は蒼の性格にも及んでいた。礼儀正しく真面目、人としてあるべき思想とはどういうものなのか。そんなことを考える中学1年になった。
妹の彩は、父に似て浮ついた性格をしている。でも、声はドスがきいている。韓流の整形してメイクまでしているアイドルを神のように崇めたて奉っている。まだ、小学生なので両親からライブに行く許可は下りていない。テレビ番組を巡って父親と大喧嘩をしている。
母は、自分が家事当番でない日は、いつ終わるとも知れない父の晩酌をスルーして、自分の書斎に入ってしまう。自分が家事当番の日は、父が晩酌の途中でも黙ってテーブルの上を片付けだす。父が文句を言える雰囲気ではない。
母は蒼とそっくりな「怖い」目つきをして父を睨む。父は最後にはビールの缶だけ持ってリビングに移動する。
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