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「蒼。お前は、この事象をどう分析する?明日の朝、私に話して」
母は、そう言うと僕の首から青いストールを外してゴミ箱に投げ込むと書斎に入っていった。
事象を分析?母は、何を言っているんだ。
ひょっとしたら、いいや、多分、翔真の母親は死んだのに。
死んだ……それは単なる事柄でしかない。翔真は悲しいだろう。その悲しみと言う感情の出どころは何処にある?死んだのが自分の母親だからだ。人間は、他人の死に同情はするが本当には悲しまない。僕もそうだ。同情しか感じない。泣き顔は「慈悲深い自分」を演出する表現でしかない。他人は他者の悲しみでさえ自分の利益に使う……。
僕は、多分、翔真の母の葬儀に参列するだろう。翔真の為に。でも僕にとって翔真の母の死は他人ごとに変わりは無いのだ。翔真の為に参列するだけだ。
自分の中で勝手な物語を創り上げて、心を病んでしまうような弱い人間は結局は生きていけない。自殺は自殺でしかない。
翔真の母親は、自分の敵が僕の母「ひとみ」だと勘違いをした。だから、僕に向かって「悪魔」と叫んだ。
どっちが良かったのだろう。翔真の父が、そもそも女ならなんでもいい男だった場合と決まった「敵」がいた場合と。
あのストールは、僕の母から翔真の母親へのプレゼントだった。病むくらいなら話し合うほうが正解だ。母は話し合いさえできない弱いメンタルの女にベランダから飛び降りる勢いを与えた。
病に翻弄される「ごく潰し」の落とし前をつけてやるための……。
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