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うまく生きられない―ー何ともぼんやりした表現だが、当時の私が置かれた状態を示すのに、これ以上妥当な表現を私は知らない。
とにかく私は、あさみの死をきっかけに、うまく生きられなくなってしまった。
表向きは、何がどう変わったわけではない。
それまで通り、私はクラス委員としても過不足なく役目をこなしていたし、先生の叱責が増えたり、友達に「変わったね」なんて突っ込みを食らうこともなかった。でも私は、少なくとも私の中では、あさみのいない新しい日常に困難を感じていた。
……何のために、こんなこと?
それまで当たり前のようにこなしていた自分の役目。誰にも迷惑をかけず、与えられたタスクを丁寧に片付ける。勉強も、宿題も日々の暮らしも――そういう、以前は当然のように実行できていたことが、途端に当たり前ではなくなった。追い風に乗るのではなく、向かい風に抗いながら何とか片付けている、そんな体感。
……苦しい。
そうして不可解な苦しみに襲われると、私はきまって、あさみが集めきれずに終わったパン祭りのシートを眺めた。あと少しというところで虚しく放棄されたポイントたち。キャンペーンの期間も終わって、もはや使いどころをなくしてしまったそれを。
「……集めとけばよかったかな」
当時はあさみの死に動揺して、パン祭りどころではなかった。でも、無理やりにでもシールを揃えて、欲しくなくともお皿に交換しておけば、この奇妙な状態とも無縁でいられたのだろうか。
結論を言えば、その読みは正しかった。
ただ、その答えに至るには、もう少しだけ、回り道が必要だったのだ。
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