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ある朝、私はとうとう乗るべき電車を逃し、そのまま学校も休んでしまう。翌朝もベッドから起きられずに学校を休み、二日三日、一週間と、学校に出られない日がずるずると続いた。
行かなければ、という義務感は当然あった。
でも、駄目だったのだ。行っても仕方がないような、何の意味もないような、とにかく、強烈な虚しさが胸に居座っていてどうにもならなかった。その虚無はしかし、本当はもうずっと私の中で静かに育っていたのだ。そうして、あの電車に乗り遅れた朝、とうとう殻を突き破って生まれ出てしまったのだろう。
両親は私を心配してくれた。先生も、それにクラスメイトも。
でも、そうした気遣いさえ、当時の私にはどこか空々しく感じられた。みんなが私を案じてくれるのは、それまでの私が〝しっかり者〟だったから。でも、これが元からだらしなく見えるキャラだったらどう? 例えば、そう、あさみのようなキャラだったら? 事実、あさみのことは誰も案じていなかった。そういうキャラだと受け流されて、でも本当は、彼女のぼんやりや不注意には重要なサインが隠されていたのだ。
彼女は、努力したくともできない日々を強いられていた。
私が勉強や身だしなみに気力を注ぐことができたのは、偶然、それを許される環境にあったから。でも、あさみはそうじゃなかった。私が真面目に授業の予習や復習をこなしている頃、あの子は人知れず、おぞましい不幸に見舞われていた。
――いいんちょ、しっかりしてるから。
しっかりしている。地道に努力を続けられる。ペース通りにゴールまで走りきれる。パン祭りのシールをきちんと集められる―ーだから何? そんなこと、はっきり言って何の価値もない。
だって結局、私はあさみを救えなかった。
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