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さすがにこれはおかしいと察した両親は、私を心療内科に連れてゆく。
しかし私は、そうした外部の気遣いや介入をひたすらに拒んだ。別に私は、治して欲しかったわけじゃない。そもそも治るって何? 元の〝しっかり者〟に戻れば良かったってこと? クラスメイトの苦しみにも気付いてやれない、ただタスクをこなすだけが能の人間に?
かといって、このままではいられないこともわかっていた。
私は特別不幸でも、まして、誰かに不当に傷つけられたわけでもない。なのに、傷ついた人間のように気遣われることに、次第に耐えられなくなっていた。
とはいえ、現状を変えたくともきっかけが見つからず、そのまま秋が来て冬が明け、やがて、ふたたびあの季節がやってくる。
パン祭りの季節が。
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