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あさみが残した去年のポイントに新たに今年のポイントを加え、点数をコンプリートさせようと思い立ったことに、特に理由はなかった。
しかし、一度思い立つと行動までは早かった。キャンペーンが始まると、さっそく私はお小遣いでパンを買い、添付されたシールをあさみのシートに加えた。
ポイントは、拍子抜けするほどあっさり貯まった。
いやそもそも、去年の段階でコンプリートまであと3点ほどに迫っていたのだ。今年は、だから菓子パンを何個か買えばそれで事足りた。
そうして一年越しにポイントを満たしたシートを手に、私は最寄りのスーパーに向かった。
「あの、これ交換したいんですけど」
さっそくレジの女性にシートを差し出す。彼女はシートを手に取ると、「確認いたします」といって点数を数えはじめ、やがて、「あら?」と怪訝そうに小首を傾げた。
「この、前半のシールは、去年のものですね」
「そうです」
「申し訳ありません、シールは、今年のものしか使えないんです」
「えっ……あ、そう、なんですか」
いかにも、たった今ルールを知った、という顔で私は答えた。
「はい。新しいシートを差し上げますので、今度はこちらにポイントを貯めていらしてください」
「わかりました」
私は、イメージキャラクターの女優がこちらに微笑みかける写真がプリントされた、点数的にはまっさらなシートを受け取ると、突き返されたあさみのシートと一緒にポケットに押し込み、店を出た。
帰り路を歩くうち、私は急に泣きたくなった。
とりあえず目についた公園に立ち寄ると、そこのベンチに腰を下ろし、人目も憚らずに泣いた。溢れては零れる涙を、だらしなく伸びたトレーナーの袖で拭きながら、ふと私は悟った。
そうか。私、悔しかったんだ。
あの子を助けられなかったことが。気づいてあげられなかったことが。考えてみれば、それはそう、と言いたくなるほどシンプルな答えだった。少なくとも、一年もかけるべき問題でもない。……いや、本当はもうずっと知っていて、なのに認められなかっただけ。それを、あの子が残したパン祭りのポイントをコンプリートして、結局お皿は手に入らなかったけど、おかげで私は、ようやく受け入れることができたのだった。
あるいは、そう、彼女の死を。
本当はわかっていた。こんな行為に何の意味もないと。そもそもシートの端には、去年のポイントは使えないことが明記されている。半端に貯まって終わった去年のポイントは、もう二度と、永遠に、コンプリートできないのだ。
それでも私は、無駄と承知で去年のポイントをお店に持ち込んだ。いくら今年のポイントで残りを満たしても無駄なのだと―ー過去は決して取り戻しがきかないのだと、そう、私自身に言い聞かせるために。
ひとしきり涙を流し終えてふと空を見上げると、澄んだ青空がどこまでも広がっていた。
私にできること。しなければならないこと。取り返しがつかないものと、まだ間に合うものーー
やっとわかった気がした。
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