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「ねぇ、どうしていつも集めてるの?」
「何を?」
「よく分からない石」
いつもいつも、気になっていた。
どうして彼は石をいつも集めているのかなって。綺麗で、色づいた魔法の石みたいなものを。
「あげたい人がいるから」
彼は笑ってそう答えた。
あげたい人って誰だろう。好きな人かな。あるいは彼女だったり。
彼に特別な感情があるわけじゃない。ただ、夢中になれることがあるのが羨ましくて。
「これ、パワーストーンっていうんだよ」
「あぁ、パワーストーンね。ローズクォーツとか、そういう感じ?」
「そうそう。これは、アクアマリン。幸運と言われてるんだ」
「……へぇ」
素っ気ないふりして、彼の目を見つめる。
綺麗な瞳だなあ、なんて思いつつ。
「あげたい人って誰なの?」
「それは――」
耳元で彼が囁いた名前は、どういうことかよく理解ができなくて。
私はその場でぼーっと立ち尽くしてしまう。
「それは、不幸続きの、きみだよ」
私は不幸続きなんかじゃない。
だって今、ものすごく幸せなんだから。
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