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「エリアス!コックたちが、同じことしか言わないんだ・・・!助けてくれ!」
「料理長は、真っ直ぐ行った部屋の奥にいますよ。」
「エリアス!?」
エリアスまでもが、おかしくなってしまっている。
もうこれは、ドッキリなんかではない。
怖い。怖い。怖い。
そして、皆、料理長、つまり私を探すための案内をしている。誰を案内しているんだ?怖い。
私はこのおかしい状況を王に説明しに行かなくては。皆、同じ言葉ばかり繰り返す、と。
「王!この国で何が起こっているのですか!?」
「・・・」
「王!なんとか言ってくださいませんか!」
「魔物が西の祠を占領していて、もうすぐこの城を攻め落としてくるかもしれんのだ。」
なるほど・・・そんなことがあったのか。
確かに、西の祠には魔物が封印されていると本で読んだことがある。しかし、聞きたいのはそのことではない。
「王!この城の中で同じ言葉ばかりを繰り返すという事象が起こっています!これについて何か知りませんか!?」
「魔物が西の祠を占領していて、もうすぐこの城を攻め落としてくるかもしれんのだ。」
まさか、王まで――?
しばらく他の人とも話してみて分かったことだが、この城の人間でまともに話すことの出来る人間は私しかいないようだった。
この状況に陥っている理由を、私は3つ考えた。
まず1つ目、これは私の夢であるということ。
次に2つ目、これは私の幻聴であるということ。
そして3つ目、これは限りなく可能性が低いと思う。そして現実的にもありえないが――この世界が、ゲームの舞台となっていること。
まず1つ目から検証していこうじゃないか。1つ目、「これは私の夢」。頬を抓ってみよう。痛い。現実か?もっと強く抓ってみよう。
「いたたたたたた・・・」
ダメだ。これは夢ではないらしい。
次に2つ目、「これは私の幻聴」。私は精神的な病気は持っていない。幻聴の主な原因は統合失調だ。幻聴が聞こえる可能性はかなり低い。
最後に3つ目、「この世界がゲームの舞台」。正直、これか1番嫌だが、1番辻褄が合う。同じ言葉を繰り返すのは、プレイヤーに対して言っている言葉だからだろう。皆、自我を持っておらず、プログラムされた言葉で話している。この城の中で、自我を持っているのは私だけ。つまりどういうことかというと――もしこの世界がゲームの舞台だった場合、主人公は私、なのではないだろうか?
そうなれば、私は剣を手に取り西の祠に向かい魔物を倒さなければならない。そうしなければ、物語が進まないからだ。
王が言っていた。「魔物が西の祠を占領していて、もうすぐこの城を攻め落としてくるかもしれない」と。それを防ぐために、私がいるのだ。私以外は、プログラムの中でしか動くことが出来ないのだ。だから、自由に動ける私、主人公である私こそが、西の祠に行かなければならない。
しかし私は一端の料理長。兵士長であるエリアスならば倒せていたかもしれないが、私は剣を扱ったことさえほとんどない。
鍛錬してから行こう。言わば、「レベル上げ」だ。
私は鍛錬場に出向いた。
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