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夜が明け、いつもの4時30分。しかし今日は違う。西の祠に行く。何が起こってもおかしくない。そうだ。服をしっかり揃えていかなければ。ゲームでは装備品を買って、装備して守備力を上げている。だから私も装備品を買わなければならない。城下町に売っているだろうか?いや、売っているだろう。何故なら、この物語の主人公は私なのだから。私が勝つようにできているのだ。
城を出て城下町に着くと、そこでも人は自由に動けないで、同じ場所に突っ立っていた。あちらからは話しかけてこない。試しにこちらから話しかけてみた。
「もうすぐ城が攻め込まれるのか・・・」
町民は落胆していた。大丈夫だ。私が必ず皆を助ける。
装備も万端、新しい剣も購入し、いざ祠へ。
長い、長い道のりを歩いていった。
やっと視界の端に祠が見えてくる。
何やら禍々しい雰囲気が祠を取り巻いていた。
きっと、これが魔物の雰囲気であろう。大丈夫だ。絶対に勝てる。何故なら、私は主人公だから。
そして、勝てなくても復活できる。そして、いづれは勝つことが出来る。今回だけにこだわらずとも、いつかは勝つことが出来る。物は試しだ。かかってこい、魔物よ!
そう思い祠の扉に手をかけると、ヒリヒリした痛みが手を襲った。
「何だ!?」
よく扉を観察してみた。どうやら封印がなされているらしい。この封印を解くには・・・どうするのか正解か。
「貴様は、勇者か?」
どこからともなく声が聞こえる。
私が、勇者?でも、そうなのだろう。私以外にこの祠にたどり着ける人は、もう居ないのだから。
「ええ。そうです。」
「ほう・・・そのような雰囲気は感じぬが、貴様からも何かに対する強い執着を感じる。」
「は、はあ。」
私はそんなに執着するような性格ではないのですがね。でも、この声の人が言っているならそうなのかもしれません。ゲームであれば、大抵この声の人は正しいことを言っているのだから。
「貴様に魔物と戦う権利を与えよう。こいつは魔王様の右腕とも呼ばれる、他の魔物とは一線を画した、強い魔物だぞ。」
「ええ。それでも。私は戦います。」
私は戦う。もう覚悟は決めた。
私は、主人公。
城を守る、勇者。
それならば、その役目を全うするまでです。
「行け!魔獣よ!」
「はっ!!!」
強い衝撃波が私を襲う。
するとそこには獣が現れた。「魔獣」だろう。
――物凄いエネルギーを感じる。
私に勝てるのか?
・・・いや、やるんだ。
ガアアアアア、と魔獣が雄叫びをあげる。
それが戦いの合図となり、私と魔獣の対戦が始まる。
私は剣を振り下ろして魔獣の体に傷をつける。
どうやら魔獣の急所に直撃したようで、魔獣は低い声で唸る。
しかし魔獣もそのまま負ける訳には行かないと思ったのか、私のことを足で蹴り飛ばす。
私はギリギリのところで耐える。そしてまた剣で攻撃を飛ばす。
すると、今度は魔獣が全力で体当たりをしてきた。
「うぐっ!」
痛い。とても痛い。
私は20メートル近く吹き飛ばされ、祠の壁に勢いよくぶつかってしまった。
これは酷い怪我をしている予感がする。骨が折れたような痛みだ。痛い。
そして、私はそのまま意識を失ってしまった――
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