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「パンはここです!くり抜きお願いします!」
「卵は慎重に運んでくださいね!」
「チーズはここに置いておきます。」
コンテスト当日。私たちはバタバタしながらも何とかシチューグラタンを作り上げようとしていた。
あの日から1週間。その間、とても濃い日々だった。
まず、試作品を大幅に変えて作ってみた。それはそれで美味しかったが、食べづらさが仇となり却下。炒める順番を変えてみたら、これが上手くいき、そのまま本番でも採用。一番最初に作った試作品からはかなり遠いものになったが、その分私たちの努力が詰まっている。美味しくないはずがない。
コンテストの運営側が用意したキッチンで私たちは必死にシチューグラタンを作る。
思えば、コンテストに参加すると決めてから色んなことがあった。乳製品の仕入れ。集団での風邪。卵事件。それらを乗り越えた私たちは強い。確かに期限が迫っていたため急いで作った部分もあったが、それは他に負けないくらい全力で頑張った。短期集中だ。
「――完成!」
「やりましたー!料理長!」
「やっぱりうちの料理長の手際の良さは世界一ですね。」
コックたちの間に入った亀裂。最初はどうしたものかと思ったが、謝罪に来てくれて解決した。あとから聞いた話だが、あれは夜に私が1人で作っているのを見たコックが他のコックにも伝えたかららしい。理由はなんであれ、また元のキッチンの雰囲気に戻ってよかった。
「それじゃあ、これを提出しに行こう。」
「はい!料理長!」
そう言って審査員の前に作ったシチューグラタンを並べる。他の国も同じように並べ始めていた。
審査員が食べ始める。私たちは緊張に包まれた。
そして、いよいよやってきた、結果発表の時。
私はあまり緊張していなかった。やれることはやった。大丈夫だ。もし、優勝できなくても後悔はない。
「優勝は――パルトビア国、『シチューグラタン』!」
優勝は、パルトビア国・・・?
優勝、したのか?私たちが。
優勝――
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