物質世界のMonster

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「料理長ーー!!!!!」 そう叫びながら、1人のコックが私に抱きついてくる。 私は放心状態。何も考えられなかった。 「料理長!やりましたね!!」 「うわあぁぁぁぁん」 コックたちは賞賛の言葉をかけてくれる。泣いている者もいる。 「――私だけの功績ではないよ。君たちのおかげさ。」 私はそうコックたちを労う。 「優勝したパルトビア国には、賞金1000万円が送られます!」 この1000万は、城に寄付しよう。そし王や王妃に、もっと美味しいものを食べてもらうんだ。 「料理長!お疲れ様でした!おめでとうございます!」 コンテスト会場から城に帰ると、まずは兵士からお祝いの言葉を頂いた。 「ルベン。よくやった。他のコックたちもだ。君たちは国の誇りだ。」 「王、感謝します。」 王からもお祝いを頂いてしまった。優勝した上に、国の方々からこんなにお祝いの言葉をいただけるなんて、私はなんて幸せ者なんだろう。 「料理長が1番頑張ってくださったんです。料理長かいなければ、私たちは・・・」 「ははは。そんなことは考えなくていいんだよ。君たちがいたから、優勝できた。それは揺るぎない事実だろう。」 そう。君たちがいたから。私1人では材料を調達することさえ難しかったと思う。ありがとう。皆。 その日はお祝いのパーティーが城で行われた。 ――関わった全ての人に、感謝しよう。牛乳とチーズを提供してくださったコルネイユ様、卵を提供してくださったノエル様、そしてメゴール地区の方。その他にも食材を提供してくださった皆様。私の相談に乗ってくれた兵士長のエリアス。城のキッチンを貸してくれた王。そして何より――一緒に頑張ってくれたコックたち。 私は自分の部屋でそんなことを考える。 今日は朝からバタバタして疲れた。もう寝てしまおう。コンテストで優勝しても、仕事は変わらない。明日も5時30分、キッチン集合だ。 「コンテスト優勝」その称号に私の胸は高鳴る。 物語の主人公のような成功体験を、私は手にしたのだ。 今日だけは、今だけは、私が世界の中心になったようだった。 そんなことを考えていると、いつの間にか眠りに落ちていた。
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