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目の前の扉からいつも通り出てくる本。今日の私にとっての運命の一冊。
なのに、今日の私には、運命の一冊だなんて思えない。
いつもなら、自分の前に置かれた本が魅力的に見えるのに、今日は隣の人の前に置かれた本の方が気になる。
私の趣味嗜好や健康状態など様々な情報をもとに最適と思われる本が出てきているはずなのに、隣の方が魅力的だった。
目の前の本に手を伸ばさないといけないのに、思わず隣に手を伸ばそうとしていた。
それは、私だけではなかった。隣の人も同じだった。私たちの腕が交差していた。
初めて見るその人の顔を見ていると、心拍数が急上昇していると警告音が流れる。
慌てて手を引っ込めて、席に着いて出された本を読む。
それでも、本の中身が入ってこない。
隣が気になってしまう。
これは、バグ。今日私に勧められるべき本と隣の人のものが入れ替わってしまったのだろう。
完璧と思われていたシステムにも、穴があったのかもしれない。
もし、これが、バグでないならば、それはきっと昔、本で見た運命というものなのだろうか。
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